『ミランダ、あるいは マイ・ランド』 |
第7場 | |
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リーン | みんな、けっこう覚えてるじゃない? |
イアン | そりゃ、そうだ。あんなに驚いたのは初めてだ。 |
フィッシャー | こうして、生き返った人間は二人目になった。イアン・ティーコとエッブさん。ただ、一つ、重要な違いが二人にはあった。イアン・ティーコの時は、彼の死を知らないものが多かったが、エッブさんの死は誰もが認めるところだった。そして、衆目の中での復活劇。 |
ホーエル | そして、ヘリングさんは、考え始めた。私の話した、イアン・ティーコの二度の蘇生と、エッブさんの復活。嘘ではないのかもしれない。蘇生の解明。復活の根拠。不死の実証。そして、二人の死者に一つの興味深い共通点を見つけるのに多くの時間はかからなかった。 |
その後、数日間。 | |
ヘリング | フィッシャーさんの家に置き時計はありましたか?確か、○○××のような。 |
ホーエル | ええ、なんでわかったんです?ひときわ目をひく、高そうな置き時計がマントルピースの上に置いてありました。 |
ヘリング | その置き時計をイアン・ティーコに譲ったのはエッブさんです。 |
エバン | 譲ったんじゃない。貸しただけだ。 |
ヘリング | イアンさんは、もともと返す気はなかったようですね。 |
イアン | そんな事はない。 |
リーン | でも、イアンの倉庫にはなかったわ。 |
ヘリング | ないはずです。置き時計をイアン・ティーコは、フィッシャー夫妻に売ったのですから。 |
ホーエル | 今、別荘にあるあの時計がそうですか? |
ヘリング | そうです。そして、エッブさんに置き時計を譲ったのが、クリスという少年であることも分かりました。 |
リーン | 私がすすめたんです。 |
ヘリング | もう一つ、確信が欲しいところですね。一度、フィッシャー夫妻に会っておきましょう。いろいろ協力していただける事がありそうですから。 |
暗転。 九日目、午後。暗転中。 | |
クリス(声) | あれ、こんにちは、あのメモってもしかして。すごい鳥ってどこにいるんですか? |
フィッシャー(声) | クリスくん。ほんの一時のことだ。許してくれ。 |
クリス(声) | 何を? |
銃声。鳥が飛び立つ轟音。高波の音。 | |
第8場 | |
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八日目。波の音。 ヘリングが、ビーチに立っている。椅子が一つおかれている。ホーエル、フィッシャーを伴い登場。 | |
ホーエル | おつれしました。 |
フィッシャー | 外交官を連行するとはどういうことですか?大佐。 |
ヘリング | いえいえ、これは、連行ではありません。対話です。幾つかの質問と、少しのお願いがあってお呼びしました。どうか、おかけ下さい。 |
クレア | (登場)あなた。 |
ヘリング | 奥様も、ご一緒ですか。・・・単刀直入にお伺いしますね、フィッシャーさん。あなたは過日、骨董商のイアン・ティーコ氏から、どうなさいました?、続けてよろしいですか。イアン・ティーコ氏から置き時計を購入されましたね。 |
フィッシャー | いいえ。存じません。確か、おきあがりこぼしは買いましたよ。こう、動くんです。右に左に、ゆらゆらとね。 |
ヘリング | そうですか。実は、イアン・ティーコ氏に詐欺の容疑がかかってきましてね。もしかしたら、フィッシャー夫妻も被害にあわれたのではないかと思いまして。 |
クレア | え? |
ヘリング | ホーエル。 |
ホーエル | はい。イアン・ティーコ氏は、随分前からですが、漂流物を売買に利用していた可能性があるのです。地元の子供たちに集めさせ、それを安値で買い取り、高値で売る手口です。しかし、それでは、詐欺ということは出来ません。骨董の世界とはそういうものなのだそうです。ところがですよ、この置き時計に限っては、別に所有者がいることが分かったのです。 |
ヘリング | ホーエル。どうでしょう。もう一度うかがいます。場合によっては、支払った金額、あるいは手形を取り返すことができるかもしれませんよ。イアン・ティーコ氏から置き時計を購入されましたね。 |
フィッシャー | ・・・。 |
クレア | ねぇ、あなた、あれじゃないかしら?ほら、あれ。特徴をおきかせねがえるかしら。 |
ホーエル | ○○。 |
クレア | ほら、そうですよ。あれ、置き時計だったんですねぇ。 |
フィッシャー | ああ、そうだな。それは、あれだきっと。 |
クレア | うちにあります。買いましたわ。てっきりおきあがりこぼしだとばかり。おきあがりこぼし型置き時計なんですね。あれ。 |
ヘリング | (笑う)それでは、フィッシャーさん。これは取り引きなのですが、やっていただきたいことがあるのです。うまく行けば、その手形を秘密裏にとり返してさしあげます。(銃を渡す)クリスという少年を知ってますね。彼を、これで、撃って、殺してみてください。 |
ホーエル、驚いてヘリングを見る。 | |
フィッシャー | な、なにを馬鹿なことを。ホーエルさん、あなたの上官は少し、常軌を逸してますな。この私に、罪のない少年を殺せというのですか? |
ヘリング | イアン・ティーコには殺されるような罪があったとでもおっしゃるんですか。エドワード・フィッシャーさん。 |
フィッシャー | え? |
ヘリング | いいですか。秘密裏にと言ったのは、あなたがたが、イアン・ティーコにしたことを全て知っているからですよ。イアン・ティーコを殺したまでは良かった。彼は何故か、生きかえり、置き時計の取り引きのことを忘れています。しかし、残念ながら、手形はいまだ彼の元にある。しかも、彼は、生きているのだから、いつでも、それを換金できる。皮肉なことに、最初のまま、というわけです。 |
クレア | 待って下さい。おっしゃる意味がよく分かりませんわ。 |
ヘリング | 良い返答をお待ちしてます。(ホーエルに)とりあえず、別荘へお戻りいただきなさい。 |
ホーエル | ヘリングさん。 |
フィッシャー、ふらふらと立ち上がる。 | |
クレア | (ヘリングに)冗談ですよね? |
ヘリング | あなたにそう言われると、冗談だと言いたくなります。しかし、私は、冗談は、あまり好きではありません。 |
クレア | なんで、どうして、うちの人が、クリスを殺さなきゃならないのよ。 |
ヘリング | それも少し違いますね。殺すのではなく、殺してみるのです。 |
クレア | 同じじゃない!! |
ヘリング | 違うのです。ニュアンスが。協力してあげてください。 |
クレア、ヘリングを殴ろうとするが、ホーエルに止められる。ふと、腹に振動を感じて、止まる。 | |
ホーエル | クレアさん?? |
フィッシャー | クレア。大丈夫か? |
フィッシャー、クレア、退場。 | |
ホーエル | ヘリングさん。どういうことですか。 |
ヘリング | どういう事というと? |
ホーエル | 私には納得がいきません。なぜ、クリスを殺さなくてはならないのですか。人を脅迫し、人を殺させるなんて。 |
ヘリング | そうではありません。 |
ホーエル | じゃあ、なんなんですか? |
ヘリング | 創造と分析。・・・私は君が望んだ、実証をしているのですよ。 |
ホーエル | でも、そんなの。邪魔しますよ。 |
ヘリング | (ため息をつく)実証すると言ってみたり、邪魔をするといってみたり。相変わらず、矛盾だらけですね。 |
ホーエル | だって、クリスが何をしたというんです?? |
ヘリング | あの少年がした事が重要なんです。 |
ホーエル | クリスも生き返るって言うんですか?? |
ヘリング | そうです。・・・彼は死にません。 |
ホーエル | そんな保証がどこにあるんですか。信じられるわけがない!! |
ヘリング | 完全に立場が逆になりましたね。数日前の君は、それを信じて疑わなかったのに。 |
ホーエル | ・・・。こそこそ人を探ったり、人殺しを黙認しろと言ったり。もういやだ。ついていけません。もう、あなたにはついていけません。 |
ヘリング | 大変残念ですが。そういうことなら。 |
ヘリング退場する。ホーエルが残り。暗転。 | |
第9場 | |
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九日目、夕方。ビーチの隅にエッブとアリスがいる。 | |
エッブ | あんたは、島の外から来たそうですな。 |
アリス | ええ。クルーザーが珊瑚にぶつかってしまって。遠くにこの島の影が見えたので、必至に泳いで、途中で気を失ったようなのですが、気がついたら、海辺に流れついてました。幸運という他ない。 |
エッブ | そうですか。島の影が。お一人で? |
アリス | ええ、一人で・・・商売をしようと思って。 |
エッブ | 商売? |
アリス | そうです。ですから、かえって良かったんです。漂流したお陰で、新しい島を発見できた。 |
エッブ | 何を売っているのかね。 |
アリス | 文化です。ま、友人は、ただの何でも屋だと言いますがね。 |
この間に別荘の方からフィッシャー登場。 | |
アリス | おや、あなたは確か、クレアさんの・・・ええと、外交官のフィッシャーさん。 |
フィッシャー | 特別外交官です。用があるので失礼します。 |
退場。 | |
エッブ | エバンに、わしの葬式について文句を言ったそうですなぁ。まぁ、自分の葬式の話しをするのも奇妙なものだが。 |
アリス | 文句ではありません。火葬という効率的で素晴しい習慣をお伝えしたかったのです。この島にはないでしょ。火葬の習慣が。 |
エッブ | それで、文化の商人か。 |
アリス | 葬儀だけじゃありませんがね。しかし、おどろきました。確かに、死人(しにん)が生き返るという伝説は世界中にありますが、この目で見るとは。 |
エッブ | 信じてるんですか。 |
アリス | いいえ、あなたは単に仮死状態だったのです。 |
エッブ | しかし、もし、その火葬という方法をとったら、わたしは、本当に死んでいたかもしれんよ。 |
アリス | いいえ、死はもちろん、手順を踏まえて効率的に確認します。そして、この方法こそが、死人(しびと)帰りといった恐怖の伝説を駆逐できるのです。それに、なんといっても衛生的。 |
エッブ | この島で、商売なさるおつもりか。 |
アリス | ええ。もちろんです。葬儀屋もいないようですしね。それに、火葬にすれば、死者の肉体は消え、空に帰って行きます。死体があったりすると、生き返るような気がしたり、やり直せるような気になってしまうでしょ。 |
エッブ | ほう。 |
アリス | 私ね、ずっとフロリダにいたんですよ。ケープ・カナベラル。ほら、分かるでしょ。あれを見たんですよ。あの偉大な光景を目の当りにして、なんか、ふっきれたんです。人類だって、いつまでも地球にしがみついてはいないんだってね。だから、故郷を後にこの島に来たんですよ。 |
エッブ | 偉大な光景? |
アリス | もう、わすれたんですか?NASAですよ。STS-1、宇宙輸送システムですよ。 |
エッブ | STS?宇宙? |
アリス | 今年の大ニュースじゃないですか?ま、あなたは古いから・・・。なんだ、熱弁して損した気分です。 |
クリス登場。 | |
クリス | あれ?リーン見なかった? |
エッブ | 見てないが。 |
アリス | 君なら知ってるでしょ?スペースシャトル。 |
クリス | ・・・何?新種の鳥?あ、そうだ、エバンが探してたよ。(退場) |
アリス | おーい。知らないのー。 |
エッブ | 田舎ですからな。それはそうと、登録所には行きましたかな。この島で・・・ |
銃声。エッブとアリス銃声の方を振り返る。 | |
アリス | 見てきましょう。 |
フィッシャーが戻ってくる。アリスぶつかる。 | |
アリス | フィッシャーさん。どうしたんですか、今・・・ |
フィッシャー | さあ。 |
フィッシャー退場。 | |
エッブ | アリスさん? |
アリス | 人が撃たれてる。クリスくんだ。 |
エッブ | (一瞬悩むが)向こうの木陰に運ぼう。手伝ってくれ。 |
エッブとアリス、クリスを運びながら。 | |
アリス | ひどい。即死ですね。 |
エッブ | そうか。 |
アリス | そうかって・・・。あ、誰か来ますよ。手伝ってもらいましょう。 |
エッブ | エバン。アリスさん。申し訳ないが、彼を向こうの木陰に運んで、見張っててくれないか。誰にも見られないように。 |
アリス | え?でも。 |
エッブ | 頼む。急いでくれ。エバン。そこで待っててくれ。今、行く。 |
アリス | 今行くって。ちょっと。 |
エッブ | アリスさん。早く。すぐ戻る。 |
エッブ、退場。アリスは、クリスの死体を運ぼうとする。 | |
アリス | なにがあったんだ。かわいそうに。 |
アリスは、クリスの死体の横に、ホーエルらは、ビーチの前方に立つ。 | |
ホーエル | なぜ、脅されたとは言え、フィッシャーさんはいとも簡単にクリスを殺してしまえたのでしょう?あの日の夜、クレアさんは、このビーチにヘリングさんを呼び出しました。 |
ヘリング | なんの御用ですか?ミセス・フィッシャー。 |
クレア | 他人行儀な態度はやめてください。一人で、こんな夜に出て来たんです。 |
ヘリング | なんのおつもりですか。大変興味があります。 |
クレア | 続きをどうぞ。 |
ヘリング | 続き? |
クレア | 前に、やりかけた事の続きです。(クレア、ブラウスのボタンをはずす) |
ヘリング | (クレアに近づいて行き)・・・そして、その見返りは? |
クレア | 分かってるはずです。主人に変な事をさせないでください。1回とは言いません。今後、あなたの望む時に何度だって--- |
ヘリング | ご主人のため。だけ? |
クレア、恥ずかしげに目を伏せる。 | |
ヘリング | ミセス・フィッシャー。勘違いをなさらないでください。確かに、私にはあなたを愛していた時期がありました。何度かお誘いした事もある。そうですね?しかし、今、私にとって大切なのは、あなた愛でも、あなたの体でもない。今の私にとって一番大事なのは、あなたのご主人がクリスを殺す事なんです。 |
クレア | できるわけないじゃない!!罪のないクリスを殺すなんて。それなら、もう手形もいりません。主人と私がイアン・ティーコを殺したことも暴露していただいて結構です。 |
ヘリング | イアン・ティーコを殺した事?生きてるじゃないですか。彼は。 |
ホーエル | ヘリングさんは、ここで、自分の仮説を話すことにしました。クリスは死なないし、撃たれたことも覚えていないはずだから、大丈夫だと。 |
クレア | そんな馬鹿なことが・・・でも・・・あの置き時計なんですね。その、あなたの言う不死のもとは? |
ヘリング | 説得していただけますね。 |
クレア、黙って退場。 | |
ヘリング | 邪魔するんじゃなかったんですか?それともこれからですか? |
ホーエル | クレアさんの事、愛してらっしゃるんですか? |
ヘリング | 答えないといけませんか。 |
元の時間。昼のビーチ。 | |
アリス | (クリスに)若いのに・・・。ラザロって知ってるかい?キリストの友達なんだけど。キリストは、ラザロが病気になっているって聞いて、彼の住む街にやってきたんだけど、もう死んで埋葬されて4日経ってた。キリストはすごく悲しんで、お墓の前に立つと「ラザロよ、出てきなさい」って言った。すると、ラザロが墓から出て来たって話し。ここにも彼は来るかな?そんな期待は残酷だよね。もし、ラザロが火葬されていたら、生き返ったと思う?暑いな。 |
アリス、クリスの脈を取ったり、心臓を確認したりしている。 リーンが歩いて来る。リーン、二人の挙動を勘違いし、とっさに隠れようとする。 | |
アリス | リーンさん? |
リーン | い。いいんです。ごめんなさい。続けてください。 |
アリス | 待って。あ!(エッブに頼まれた事を思い出して)行ってください。 |
リーン | は。はい。(立ち止まって)クリス、一つだけ答えて。クリスは--- |
アリス | 待った。答えませんよ。 |
リーン | ひどい。 |
アリス | だって、死んでるんですよ。彼。 |
リーン | は? |
アリス | あー、死んでるんです。さっき、お亡くなりに。 |
リーン、クリスに駆け寄り、 | |
リーン | 何してるの?クリス!ちょっと!何してるのよ!!ちょっと、ねえ・・ねえ、クリス!! |
アリス | ちょと落ち着いて。 |
エバン | (登場)どうした!!クリス!お前。 |
エッブ | (登場)エバン! |
リーン | この人が、クリスをこ、ころ、ころ、ころし--- |
アリス | ええ?ちょっと、あなた誤解しすぎ。 |
リーン | 誰かーー!! |
アリス | 違いますって!! |
エバン | おい、クリス。しっかりしろ。クリス。 |
アリス | 死んでますって。 |
クリス、起き上がる。 | |
アリス | え・・・。(恐怖で、後ずさる) |
ホーエル、ヘリング現れる。 | |
エバン | クリス。 |
クリス | あれ?ここは? |
アリス | そんな!! |
リーン | 誰か。あいつを早くつかまえて。人殺しよ!! |
エバン | 死んでないけどな。 |
クリス | 誰が死んだの?? |
アリス | 確かに死んでいたのに。 |
ヘリング、アリスをつかまえる。 | |
リーン | ヘリングさん、その人、クリスを!! |
ヘリング | 今、なんと言われました? |
アリス | え? |
ヘリング | 確かに死んでいた、と言われましたか? |
アリス | 確かに死んでました。私、脈も、呼吸も。 |
ヘリング | 結構。お連れしてください。 |
ホーエル、アリスを連れて行く、 | |
ホーエル | ご安心ください。 |
ヘリング | クリス君。何があったんですか? |
クリス | さあ、良く覚えてません。森の奥にすごい鳥がいるってメモが玄関に、それで。 |
ヘリング | きっと、君は転んだんですよ。(頭を触ったりしながら)頭を打っているようですしね。アリスさんは、勘違いをしただけだ。一度、帰って休みなさい。みんな、クリス君を送ってあげてください。 |
クリス | うん。俺、転んだの?? |
エバン | 分からねえけど。 |
クリス、エバン退場、 | |
リーン | でも、あの人、死体って言ってた。あ、ちょっと、待ってよ。 |
リーン退場。 ヘリング、リーンの台詞を聞き、彼女を目で追う。 エッブ、周囲の様子を見て、なにか考えている。 | |
エッブ | アリスさんと話せるかな? |
ヘリング | ええ。構いませんよ。ホーエル君に言ってください。 |
エッブ、退場。すれ違いに、フィッシャーやってくる。 | |
フィッシャー | ヘリングさん。お返しします。それにしても、はらはらさせられましたよ。 |
ヘリング | お約束のものです。(手形をだす) |
フィッシャー | どうやって、取り戻したんですか? |
ヘリング | 不用心に店を開けてたので、勝手にとって来ました。まぁ、イアン・ティーコがいたらいたで、記憶を失わせる方法はありますからね。あなたも、そうすれば良かったのに。 |
フィッシャー | 恐ろしい人だ。 |
ヘリング | 人を二人も殺した方にそう言っていただくとは、光栄です。 |
フィッシャー、退場。その後ろ姿に、ヘリングが銃口を向ける。 | |
ホーエル | あとは、置き時計を奪うだけ。ヘリングさんはそう考えていました。ビーチは神秘に溢れている。置き時計の所有者はなんと不死の力を得る。たとえ、死んだ時の記憶は失ってしまっても。そんな祝福すべき道具を他人と手元においておけるわけがない。 |