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| 数時間後。リッツ不在のフラットにヴィックス、アイク、ミク、ロン、セルジュ、フシコ、フシコ2、グレーブルら、ジャバルを除く全員が集まっている。同窓会的騒がしい雰囲気が伝わってくると良い。 |
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フシコ
| 信じられないわ。アイク君がリッツ君のクローン? |
フシコ2
| 本当なんです。 |
フシコ
| だって似てないじゃない! |
セルジュ
| お前が言うな、お前が! |
ロン
| だが、その探知機で反応が出たからって、どうしてリッツのクローンだって言えるんだ? |
ミク
| どういうこと? |
ロン
| だって、クローンかそうじゃないかは、体内の「D-レヴィ」で分かるだろうけど、リッツのクローンかどうかを判定できるわけじゃないだろ? |
フシコ
| それに、今やってみたら、検知器光らないじゃない。 |
グレーブル
| あのー。 |
フシコ2
| それは、説明された通り、彼がフォリッツを服用したからです。 |
セルジュ
| 成功作だったわけだな。 |
フシコ
| 証明できないわ。 |
アイク
| リッツは言ったんです。これを飲んで自由に何の制限も受けずに生きて行ってくれって。それはつまり、人間になれるって意味じゃないかと。 |
ロン
| アンドロイドの言う事だろ? |
ミク
| だからそれは、本物のリッツだったって言ってるでしょ。 |
グレーブル
| あのー。 |
セルジュ
| 元々死ぬハラで、お前らを納得させようと一芝居うったんだよ。 |
ミク
| あーむかつく。どうして!あいつ昔からすぐ一芝居うつのよ。これで何芝居打たれたか!え?何芝居よ? |
ロン
| 俺に聞くなよ! |
ミク
| 俺に聞くなよ。心で分かれよ。いやー!むかつく。 |
フシコ2
| ミクちゃん落ち着いてください。 |
フシコ
| 兄弟保有者って本当にエリートなの?免責なんて必要ないわよ。 |
ミク
| 何ですって! |
アイク
| あの!(今まで考えていた事を言おうとする)誰かできませんか? |
セルジュ
| 何を? |
アイク
| 僕がリッツのクローンだってことを証明できませんか。 |
ロン
| 証明? |
フシコ2
| フシコさん、できますよね。 |
フシコ
| そうね、リッツの体の一部があれば、研究室で。 |
アイク
| 体の一部。それがないと無理ですか? |
フシコ
| 無理ね。何でも良いのよ。例えば・・・ |
ロン
| 爪だ! |
フシコ
| そう爪でも・・・ |
ロン
| 爪。ほらキーボードの中にって。 |
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| ロン、ヴィックス、アイク、われがちにキーボードに殺到し、奪い合いながら逆さにふったりする。 |
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ロン
| 落ちた!! |
アイク
| こ、こ、これで、分かります? |
フシコ
| いいわ。あとアイクくんのなんかちょうだい。だ液がいいかしら。 |
アイク
| だ液(手につばを履いて、フシコに差し出す) |
フシコ
| 後でいいわ! |
アイク
| 急がないと! |
フシコ
| DNAを分離してから、スクリーニングするから時間がかかるわ。 |
アイク
| それじゃ、間に合わないよ! |
ヴィックス
| お前、何がしたいんだ? |
アイク
| リッツはもう死のうと決めてるんだ。でも、それは許されないんだ。 |
セルジュ
| 許されない? |
アイク
| そう、ほら、ロンさんが、自分の命の事は自分で決めるべきだっていった時、レミックスさんは反論した。 |
フシコ2
| 自己決定権の話ね。 |
アイク
| そう、レミックスさんは、誰かの命でも個人の所有物ではなく、全体の財産として考えるべきだと言った。それなら、僕はリッツの自己決定も許さない。リッツの命は彼だけの物じゃない。僕らの財産だ! だから、リッツを救うんだ。誰か、僕がリッツのクローンだってすぐに証明できない? |
ロン
| 救うって、しかし、どう(やって?)・・・ |
グレーブル
| あのー! |
ヴィックス
| なんですか、管理人さん。 |
グレーブル
| 差し出がましいようですが、アイクさんは、リッツさんのクローンですよ。 |
一同
| エ? |
グレーブル
| ここ最初はリッツさんとアイクさんで契約されたんです。後からヴィックスさんが同居するようになったみたいだけど。その時、リッツさんとアイクさんの戸籍をもらおうとしたら、アイクさんの戸籍がないの。それでいろいろ聞いたら。そう言ってましたから。 |
ヴィックス
| 確かに戸籍局にはアイクのデータがなかった。 |
グレーブル
| なんでも、ご両親がどうしてもリッツさんに兄弟を持たせたくてした事だって。ほら、兄弟保有者は、一人っ子に比べて高い地位につけるでしょ。いろいろ優遇されるし。 |
フシコ
| いろいろどころじゃないわ。サバイバル・ロッタリーからも免除されるのよ。 |
アイク
| グレーブルさん、それは確かなんですね? |
フシコ2
| 待って、アイク君は、自分がリッツのクローンだって証明して一体どうするつもりなの? |
アイク
| 身替わりになる。ほら、セルジュさんの言っていた方法で。僕がリッツだって言って・・・。 |
ロン
| 身代わり? |
セルジュ
| 今さら難しいだろうな。 |
ミク
| そうよ、それに、その方法で、どうして私たちが納得できるのよ? |
アイク
| だけど、リッツを助けるにはそれしかないだろ? |
フシコ
| 駄目よ。絶対! |
アイク
| 僕の命を僕がどう使おうと勝手だろ! |
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| 間。 |
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ヴィックス
| アイク・・・。お前言ってる事が矛盾してるよ。リッツだけじゃないだろ?お前の命だってみんなの物だ。 |
アイク
| (泣き出しそうになる)それじゃ、リッツは・・・。何か方法はないんですか?早くしないと、リッツが、リッツが・・・。 |
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| 一同、沈痛な表情で、沈黙する。 |
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グレーブル
| あのー。・・・あのー。 |
ヴィックス
| 何ですか? |
グレーブル
| 兄弟保有者って、サバイバル・ロッタリーに引っかからないんですか? |
ロン
| そうだよ。何を聞いていたんだね。 |
グレーブル
| それなら、リッツさんが兄弟保有者なら良いわけですよね。 |
フシコ
| リッツくんには兄弟はいないじゃない! |
グレーブル
| それって、一卵性の双子でも良いんですよね? |
一同
| それだ! |