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| 一か月以上後。フラットは元の3人に戻っているが、リッツは、本物ではなくアンドロイドである。 |
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アイク
| 今日、レミックスさんが来るんだね。これならしばらくはばれないよ。よくできてるなぁ。 |
ヴィックス
| 解剖されれば、すぐにわかってしまうよ。機械なんだろ。これ。 |
リッツ
| 安心してください。機械ですが、すぐにはばれないはずと、リッツが言ってました。 |
アイク
| リッツにはもう会えないの? |
リッツ
| しばらくは無理だと言ってました。しかし、首尾よく姿を隠す事が出来たそうですよ。 |
ヴィックス
| ひとまずは安心だな。 |
リッツ
| ヴィックスさん。私は、リッツから伝言を預かっています。ただ、アイクさんにだけ伝えるよう言われている伝言なので、席をはずしていただけませんでしょうか? |
ヴィックス
| アイクにだけ? |
リッツ
| ええ。 |
ヴィックス
| 分かったよ。じゃ、風呂にでも入るか。 |
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| ヴィックス、バスルームへ。 |
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リッツ
| アイクさん。これは私がリッツから預かっている伝言です。言われた通りに言うので、聞いていてください。なお質問などをされても私には答える事が出来ないのでご容赦くださいね。 |
アイク
| メモが必要かな? |
リッツ
| 質問には応じられません。 |
アイク
| わかったよ。 |
リッツ
| 始めます。「アイク、よく聞いて欲しい。俺は、出来心や冒険心からフォリッツを盗んだのではない。そして、なぜ、盗んだのかはお前には言えない。だから、お前に追求された時、金の為だと言って、お前を怒らせてしまった。あれは謝る。俺は何度かフォリッツは俺の物だと言った。だが、本当は・・・いや、やめておこう」 |
アイク
| なんだよ、本当はなんだよ? |
リッツ
| ・・・(ちょっと考えた様子)・・・質問には応じられません。続けます。「アイク、今から、アンドロイド・リッツがお前にあるものを渡す。どうか、何も言わず、そのカプセルを飲んで欲しい。本当は、こんな風に渡すはずではなかった。ただ今はこうするしかない。俺を疑わずに飲んで欲しい。そして、自由に何の制限も受けずに生きて行ってくれ。」(カプセルを渡す) |
アイク
| リッツ。 |
リッツ
| 「追伸。俺の爺さんも米粒に字を書く趣味があったよ。奇遇だな。早めに戸籍を取るように。大人の人間はみんなそうしている。では幸運を」 |
アイク
| なんだよ!!全然意味が分からないよ!!終わり? |
リッツ
| 終わりです。ヴィックスさん。終わりましたよ! |
ヴィックス
| 何だよ。水しか出ないよ。 |
リッツ
| ふふふ。結局、ヒーターは直していないはずでしたね。 |
ヴィックス
| そうだった、アイク、電気屋を呼んでくれよ。 |
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| アイク、リッツを見て、電話に向かい電話をかける。 |
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ヴィックス
| よく電話器は直せたよな。さて、そろそろかな。 |
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| ドアホンが鳴る。 |
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ヴィックス
| 時間通りだ。 |
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| ジャバル・レミックスがあらわれる。 |
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レミックス
| こんにちは。いかがですか? |
リッツ
| ええ、不思議な程、落ち着いています。 |
レミックス
| これから、あなたにはいろいろ検査を受けていただきます。移植に耐えられる臓器の量や血液濃度など、それから遺伝疾患がないか?心理学的なカウンセリングも受けていただきます。そして、全てが終わり10日後に手術です。生体間移植を行います。 |
ヴィックス
| 殺してからではないんですね。 |
レミックス
| 死んだ人間から移植ができるなら、そもそもこのような法律を作る必要はないでしょ? |
リッツ
| ええ。わかってます。 |
レミックス
| そうして、あなたの体は空っぽの空洞になります。内臓だけではなく、骨髄や筋肉細胞、角膜、皮膚も移植されます。しかし、その各器官は、他の多くの人の命を救い、その方々の体で生きていくのです。脳はどうされます? |
ヴィックス
| 脳? |
リッツ
| 脳は移植できない。そうですね。どうせなら、全て公共の利便のために使って下さい。脳標本でもかまいません。 |
レミックス
| ここまで、冷静で、理性的な方にはこれまでに出会った事がない。そのような方に、まさかとは思うが、事務手続き上、確認をさせて下さい。 |
リッツ
| それは? |
レミックス
| Xレイ・ポラロイドです。体内が見えます。あなたがちゃんとした人間かどうか確認させていただきます。 |
ヴィックス
| リッツ? |
レミックス
| そのままでどうぞ。(そういいシャッターを押す) |
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| ポラロイドが出て来る。画像が浮かび上がるまでしばらくの緊張感。写真に目を落としていたジャバルが厳しい表情で突然、立ち上がる。そして、リッツに手を延ばし、破顔し握手を求める。 |
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レミックス
| 大変失礼した。手続き上の事とは言え、私は自分を恥じなければならない。リチャード・グリフィンさん。このような形とは言え、あなたとお会いできて良かった。 |
リッツ
| こちらこそ。光栄です。 |
レミックス
| では。参りましょう。 |
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| リッツとレミックスが出ていこうとする時、フシコ2が駆け込んで来る。 |
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フシコ2
| アイク。どうしたの?リッツ、それにレミックスさん。 |
レミックス
| これはこれは、確かクローンのお嬢さん。本体さんはお元気ですか? |
フシコ2
| ええ。まあ。 |
リッツ
| レミックスさん。行きましょう。 |
レミックス
| では、失礼。 |
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| 二人、出ていく。 |
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フシコ2
| 今日だったの?もっと先って聞いていたけど。 |
アイク
| ええ、まず検査入院があるんです。でも、大丈夫。(小声で)あれはリッツの、例の。 |
フシコ2
| アンドロイド?すごい技術力です。 |
ヴィックス
| アンドロイド・・・。フシコ2どうしてここへ? |
アイク
| 僕が呼んだんだ。あれ、持って来てくれた。 |
フシコ2
| ええ。 |
ヴィックス
| ちょっとまて、何の話だ。 |
アイク
| うん、ちょっと秘密。 |
ヴィックス
| いや、違う。アンドロイドだって?X線に映らないだって?結局、ヒーターは直していないはずですだって?なんで知ってるんだよ!アンドロイドがなんで知ってるんだよ!!!アイク、リッツだ。リッツが行ってしまった!!リッツ! |
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| ヴィックス、大慌てで飛び出していく。 |
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フシコ2
| どういうことですか? |
アイク
| まさか!リッツ。 |
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| 飛び出していこうとする。 |
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フシコ2
| 待って、アイク。頼まれたものよ(以前、フシコが持っていたクローン人間探知機を渡す) |
アイク
| それか。 |
フシコ2
| ええ、(そういって自分に近付ける、音が鳴り光る)。これを何に。 |
アイク
| (アイク、そっと手を延ばし、その機械を受け取ると自分の体にちかづける。) |
フシコ2
| 何を?(機械が光り音を出す)あ! |
アイク
| ・・・・。フシコ2、お願い。ヴィックスを連戻して来て。まだ、その辺にいるはず! |
フシコ2
| 任せて!! |
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| 一人になったアイク、ポケットに手をつっこみアンドロイドリッツにもらったカプセルを眺め、一気に飲み下す。 |