| 承前。電気屋が嬉々として電話の修理を始めた。リッツとヴィックス、それにアイクは、ベッドに並んで座っていた。彼らはこの部屋の住人だが、いまや物語は彼らを端役に追いやってしまった。部屋の中心部を、ロンと彼に追求される長身の女が占めているように、物語の中心も彼らの行動に焦点を当てはじめているように思えた。ミクは、いまだ、どっちつかずの位置にいる。 |
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ロン
| (今さらだが生真面目に)さて、本題に戻ろう。正体を明かしてもらおうかな。どうして、写真を撮った? |
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| ロンがリッツたちに対するのとは違う、厳粛な態度で女に聞いた。女は一瞬の沈黙もなく明解に答えた。 |
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フシコ2
| スカウトよ。 |
ミク
| スカウト? |
フシコ2
| そうよ。明日のショービズを担う男の子たちをスカウトしているの。私は、フシコ・フィッツジェラルド・サワダ。よろしく。 |
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| フシコと名乗った女は、きびきびとした態度で答えた。しかし、言葉の意味をこの尋問者に理解させようという意志は感じられなかった。 |
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フシコ2
| そういうあなたは、なんなの? |
ロン
| 私は、そうだな、回収屋だ。 |
フシコ2
| 回収屋?何それ? |
ロン
| 知る必要はない。 |
ミク
| 誰を? |
ロン
| エ? |
ミク
| スカウト。誰? |
フシコ2
| まだ、分からないわ。決めるのはエージェントよ。私は、ただ素質がありそうな男の子の写真を撮るだけ。 |
ミク
| (フシコに接近して)誰に素質があるの? |
フシコ2
| ごめんなさいね。それは言ってはいけないの。だから隠し撮りだったのに、この人が(ロンを睨む)。 |
ロン
| 隠し撮りは違法行為だ。 |
フシコ2
| だから、私を捕まえたって言うわけ?この部屋の住人でもないあなたが? |
ロン
| なぜ、私がこの部屋の住人じゃないと分かる? |
フシコ2
| 見れば分かるわよ。 |
ミク
| (フシコに詰め寄って)ねえねえ。でもこの部屋を隠し撮りしたって事は、この3人のうちの誰かが狙いなんでしょ?ねえ、そうでしょ? |
フシコ2
| まあ・・・そうね。 |
ミク
| どうして?どこが良いの?こんな連中の??(この世の中で最大の不合理を見たとでも言うような顔で) |
フシコ2
| 若いくせに考えがとても古いわ。バート・ランカスターの時代のように古いわ。 |
ミク
| どういう事? |
フシコ2
| 良くて?今のショービズに絶対的な価値観なんて存在しないのよ。この子たちはね、素材が良いわ。そうね。猫の年齢でいうと8才。それも奥の手よ。 |
ミク
| 奥の手? |
フシコ2
| そう、ね。どう?やってみない。リスクはないのよ。歌が良い?お芝居?映画に出てみる?あなたたちなら、大成功間違いなしよ。永遠に続くかと思われるような栄光の階段をひとっとびなのよ。 |
リッツ
| 永遠には続かないんですね。 |
フシコ2
| 永遠なんてむなしい言葉だわ。そう、フロイド・ロリンズの20日間のようにね。 |
アイク
| 言ってることがよく分からない。 |
ヴィックス
| ショービズって具体的になに? |
フシコ2
| うーん。露骨だけど良い質問ね。ショービズとは何か。夢と栄光の世界?百万ドルの殿堂?華やかな音と光のセレブリティ?魔法と冒険の私小説?まぁ、そんなところよ。 |
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| 答える側のはずのフシコだが、すべての言葉に疑問符が差し込まれていた。どうも怪しい感じがする。ロンでなくとも、この女が芸能プロダクションのスカウトマンだとは、どうして思えない。 |
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ロン
| 本当にただのスカウトか。 |
フシコ2
| ええ。そうよ。 |
ロン
| (小さな溜め息を付いて)セルジュさん。電話は治りましたか? |
セルジュ
| これからです。 |
ロン
| ヴィックスくんメール借りていい?ちょっと緊急事態。 |
ヴィックス
| 緊急? |
ロン
| なんていうか、ちょっと人が増えすぎてきた。判断を仰ぎたい。 |
ヴィックス
| いいですけど。 |
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| ロンが端末に向かう時、フシコが鼻を鳴らした。 |
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|
フシコ2
| メール?緊急なんでしょ。電話にしたら? |
ロン
| 電話は、壊れているんだ!ね、今修理中。 |
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| ロンは一瞬声をあらげたが、すぐに作り笑いを浮かべた。 |
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フシコ2
| やだ。だって移動電話があるでしょ?ないの?もってないの??みんな? |
アイク
| このマンションは電波バリアしてるんできかないんです。 |
フシコ2
| ああ。なーんだ。そういうこと。なら、私の使っていいわよ。はい。 |
|
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| フシコは、妙に親し気にロンに携帯を差し出した。ロンは、鼻で笑って受け取った。 |
|
|
ロン
| 彼の説明をきいていただろう?このマンションはだめなんだよ。いいか。私の組織の特製電話ですら・・・(ふいに言葉をきってフシコの携帯を強く握る)・・・入る。それじゃ、ちょっと(キッチンの方ヘ移動する)。 |
アイク
| ホンワリのとこ? |
ロン
| うん。正直言って、もう引き上げたい。この仕事。(やがて、押さえた声で)あ、もしもし。ロンですけど、例の回収の件で・・・え?ボスは留守。はぁ。しかし、メールを出しても、自動応答でつながらない。え。休暇中は、一切の連絡をとらない。どうすればいいんでしょう。ICは間違いなく彼等が持ってます。知らない?知らないってそんな。わかりました。バカンスはいつまでですか?バカンスじゃない?え?育児休暇?三年。はぁ。そうですか。わかりました。では。 |
ロン
| ボスの奥さんに子供ができたらしい・・・。 |
フシコ2
| そう。それは、おめでとう。それ、返して。(一同から離れて電話をかける)あります。ここにICがあるそうです。 |
リッツ
| フシコさん? |
フシコ2
| 応援を!(切る)何? |
ロン
| 誰に? |
フシコ2
| エージェントよ。歌メインでいくか?ダンス重視で行くか、相談してたの。 |
ロン
| それにしては随分短いな。 |
フシコ2
| ショ、ショービスの世界は時間が資本だからね。 |
ロン
| もう一度聞く、誰だ?お前。 |
フシコ2
| スカウトだって言ってる・・・ |
ロン
| (フシコ2に銃を向ける) |
フシコ2
| キャー!ちょっとびっくりさせないでよ。おもちゃでしょ? |
ロン
| 本物だ。私は今、割と怒っている。組織のために必死に働いているのに、ボスは育児休暇でバカンスだと! |
フシコ2
| 男性も育児休暇をとる権利があるわ! |
ロン
| そういう問題じゃない!さ、答えるんだ!今、どこに電話をした!言え! |
|
|
| その時、セルジュが今までより少し真面目な顔で現れ、ロンの手から銃を奪おうとしてもみ合いになる。 |
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|
ロン
| 離せ。 |
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|
| フシコ2は逃げようとするが銃口が動くので慌ててどこに逃げれば良いか分からない。一同も逃げようとして、フラットはパニックの様相を呈する。そして、二人は奪い合いながら銃を発砲してしまう。 |
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|
ロン
| (手を押さえて銃を落とす)お前!何をするんだ! |
セルジュ
| だって、女性に銃を向けるなんて、ほら。 |
ロン
| ほらじゃない!!死人が出るぞ!(銃を拾う) |
セルジュ
| うわー!何か、これ、すいませんねぇ。 |
ヴィックス
| みんな大丈夫か? |
ロン
| 電気屋は大人しく電話を直してくれ! |
セルジュ
| は、はい! |
ミク
| 大変!この人が! |
ロン
| どうした? |
ミク
| えっと、フシコさん!フシコさん。 |
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|
| フシコ2はよろよろと徘徊するようにおかしな動作で歩き回る。 |
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|
アイク
| 撃たれたの?フシコさん! |
ロン
| いや、あたってないはずだ。ミクちゃん。水! |
ミク
| は、はい! |
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|
| ミクが慌てて台所に駆け込んだ所で、おかしな声がした。 |
|
|
フシコ
| 水なんか無駄よ。 |
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| 初めて聞くしわがれた声の女の声がそう告げた。ミクが後ずさりをしながら部屋に戻ってくると、ミクを圧殺するかのように一人の女が入ってきた。あるいは、窓を乗り越えて(ベッドの所でちょっとよろけて)入って来ても良い。とにかく、不様に見えると良い。フシコ2と同じスーツ・スタイルの服を着ているが、どうにも似合っていない。体型がフシコとは全く異なるからだ。有り体に言えば、滑稽である。女は壁に寄りかかり、似合わないポーズをつけた。 |
|
|
フシコ
| 私の名前は、フシコ・フィッツジェラルド・サワダ。初めまして。 |
ミク
| フシコさんはこの人でしょ。 |
フシコ
| こいつは私のコピーよ。本体は私。 |
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|
| 一瞬の間の後、ざわめきがおこった。 |
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|
ヴィックス
| (おそるおそる)本体? |
フシコ
| そう。これは、私のコピー。フシコ2。 |
リッツ
| コピー? |
フシコ
| そう。いわば、こいつは、私の鏡像。鏡にうつったもう一人の私。私とうりふたつに作られたコピー!ごめんなさい。言い過ぎました。 |
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|
| 本当のフシコを名乗る女は、諦めが良いのかすぐに謝った。 |
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ロン
| で、大丈夫なのか? |
フシコ
| ちょっと待って。 |
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|
| フシコ2の背後に回り、いろいろ動かす。 |
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フシコ
| 治ったわ。これで、あとは鼻を押せば動くわ。えい!(自分の鼻を押す) |
ヴィックス
| 自分のかよ! |
フシコ
| 冗談よ。別に、私が、ユマ・サーマン似だからって、冗談をいっちゃいけないわけじゃないでしょ?ごめんなさい。言い過ぎました。 |
フシコ
| フシコ2。大丈夫?聞こえる。 |
フシコ2
| 聞えます。 |
フシコ
| 大丈夫、私は誰? |
フシコ2
| フシコさん。 |
フシコ
| よし、もう平気。さて・・・。 |
ロン
| さて、じゃない。お前は誰だ? |
フシコ
| 確認?それとも、脅してるの? |
ロン
| どうして芸能スカウトがコピーなんだ? |
フシコ
| 芸能スカウト?フシコ2、説明してちょうだい。どういう事? |
フシコ2
| ええ、指示通り、ここにやってきたのですが、思いのほか大勢の人がいたものですから。 |
フシコ
| だから? |
フシコ2
| 取りあえず、状況写真を撮って、再度指示を仰ごうと思ったのですが・・・ |
フシコ
| つかまってしまった、というわけ? |
フシコ2
| はい。 |
フシコ
| それで? |
フシコ2
| はい。プラン54b、芸能プロダクション編を実行して、なんとか情報を得ようと。 |
フシコ
| 馬鹿!プラン54b、芸能プロダクション編で情報が得られるわけないでしょ!じゃあ、ICがあるってどうして分かったの? |
フシコ2
| ええ、この人が電話でペラペラと。それでフシコさんに連絡を。でもその後、大きな音がして・・・。 |
フシコ
| まあ、いいわ。結局、こうして強行策にでる事になったのだし。さ、あなたたち。良く聞いて。これは、正義の問題なのよ。あなた方が持っている事は知っているの。私たちにそれを渡して。 |
ヴィックス
| なんのことですか? |
フシコ
| とぼけないで、《フォリッツ》よ。フランシスコ・ザビヌル&パウル・ペトルチアーニ・カンパニーからあなた方が盗んだ事はとっくにお見通しなのよ!! |
ヴィックス
| フォリッツ? |
フシコ
| クローン・オリジナライザー。フォリッツよ。 |
アイク
| フォリッツ? |
フシコ
| クローン・オリジナライザー。ああ、それはさっきも言ったわね。 |
ヴィックス
| 「こうして、話はだんだんSFの様相を帯びて来ました。フシコ・フィッツジェラルド・サワダはフランシスコ・ザビヌル&パウル・ペトルチアーニ・カンパニーが極秘に製造したクローン・オリジナライザー、フォリッツを追っていました。それは、紛れもなく・・・」 |
|
|
| と、ヴィックスがいつものようにナレーションをしていると、セルジュがやってきて、「任せろ」とでも言うように、ヴィックスを手で制止し、そのナレーションを引き継ごうとする。ヴィックスは、「なんで?あなたが?」という顔で抵抗するが、やがてセルジュにその権利を譲る。 |
|
|
セルジュ
| 「息が臭い人間は鼻息も臭いのかという古くからの命題を解くため多くの研究者が取り組んできた・・・」 |
ヴィックス
| (セルジュを制止して)「それは紛れもなく、ロンが奪い返せと命じられた物で、我々が盗んで来た物でした。そして、クローン・オリジナライザーとは、」 |
フシコ
| 簡単に言うと、クローン人間を、普通の人間にするための物よ。 |
ミク
| クローン人間って、だって世界中で禁止されてるはずでしょ? |
フシコ
| 禁止されてるからっていないわけではないわ。禁止される前に作られた固体、それから禁止後違法に作られた固体。出来てしまったクローン人間は処理するというわけにもいかないから、そのまま存在しているのよ。良いわ隠さず言うと、この子もそう(フシコ2を指す。) |
ミク
| え? |
フシコ
| だからコピーって言ったでしょ。彼女は私のクローンだけど、構造的に欠陥があって聴覚の大部分を機械に頼っているの。大きな音がすると、電圧が不足してしまう。だからさっき、そっと、取り替えたのよ。ほら。 |
ヴィックス
| 単三電池! |
フシコ
| 古いタイプの補聴器だからね。だけど三半規管までサポートできる。 |
ロン
| で、フォリッツってのは、なんなんだ? |
フシコ
| あなた、知らずに取りかえそうとしてたの? |
ロン
| ああ。中身がなんだかは知らされていなかった。 |
フシコ
| それじゃ、一つ聞くけど、あなたたちクローン人間をどうやって見分ける?(自分とフシコ2を並べて見せる) |
ヴィックス
| 顔が似てる?似てないか。 |
フシコ
| 失礼ね。 |
ミク
| DNA情報を調べれば、全く同じ遺伝子を持ってるんでしょ? |
フシコ
| 一卵生双生児もそうよ。 |
ミク
| え?じゃあ、どうすれば良いの? |
リッツ
| 無理なんだ。外見やDNA情報で誰がクローンかなんて分かりっこない。 |
フシコ
| その通り。誤解されがちだけど、本体とクローン人間はそっくり同じと言うわけではないわ。指紋だって違うのよ。唯一の方法は。 |
アイク
| 何? |
フシコ
| 「遺伝子の痣」 |
ミク
| 「遺伝子の痣」? |
リッツ
| クローン人間に特有の遺伝子のガンの事だ。クローン人間は、必ずと言って良い程、このがんに侵される。それが世界中で製造が禁止になった科学的理由だ |
フシコ
| 良く知ってるわね。さっきも言ったけど、作られてしまったクローン人間には誰もが手を焼いたわ。はっきり言えば、処理して、いなかった事にしたかった。残酷な話だけど丁度良かったの。彼らは「遺伝子の痣」のせいで、短命だった・・・。 |
ミク
| みんな死んでしまったの?え?じゃあ(フシコ2を見る) |
フシコ
| いいえ。小線源治療でこのがんはある程度押さえられる事が分かったの。ある小線源を埋め込めば長生きできる。 |
アイク
| よかった。・・・で、小線源治療って何? |
リッツ
| 放射線を発する金属を患部に埋め込む治療だよ。その小線源を共通の規格にすれば、クローン人間を特定できる。がんをおそれて小線源治療を受けたクローン人間には、その「証」が一生の残る。 |
フシコ
| 詳しいのね。その通り、体の外からでもその放射線は検出できるから、金属探知機ならぬ、クローン人間探知機ができる。こんな感じ(取り出した機械をフシコ2に当てると音が鳴り光る)。そして、フシコ2の体内にある小線源、つまり放射線発生装置を作っているのは世界でただ一社。国連の保護の元に置かれた非営利企業。そしてこの放射線発生装置が・・・ |
ロン
| フォリッツ! |
フシコ
| 「D-レヴィ」!その放射線発生装置は「D-レヴィ」! |
ロン
| おいおい。で、フォリッツはどこに出て来るんだよ。 |
フシコ
| まだよ、20分は先ね。 |
|
|
| ロン、フシコに銃を向ける。フシコも空手の構えで対抗する。 |
|
|
アイク
| ちょっと、話を続けて下さいよ。 |
フシコ
| あー、もう私だって話が長くなっていやなのよ。あー、喉痛い。水〜。 |
フシコ2
| 代わりに私が説明します。私のようなクローン人間は、クローンである事を隠そうとするなら、がんで死んでしまいます。だから「D-レヴィ」を受け入れて、クローン人間のレッテルを甘んじて受けなければなりません。 |
フシコ
| さっきも言ったけど、どうやったって見分けられないんだから、「D-レヴィ」さえなければ、普通に人間として生活が出来るのよ。 |
フシコ2
| ところが、最近、あるカンパニーが極秘に研究を重ね、ある装置を開発したという情報を掴んだのです。 |
ミク
| それが? |
|
|
| フシコ2がしゃべろうとすると、フシコがさえぎって、 |
|
|
フシコ
| 待って、そこは言わせて。お待たせしました(せき払い)その装置の名こそ・・・ |
セルジュ
| フォリッツ! |
|
|
| 一同、沈黙する。 |
|
|
フシコ
| 何よ!もう!良いわ、説明お願い |
フシコ2
| フォリッツは、簡単に言えば、「D-レヴィ」を検出不可能にする装置。「D-レヴィ」のがん抑制機能を保ったまま、クローン人間探知機にひっかからないようにする物らしいのです。 |
セルジュ
| そうそう、電話直りましたよ。お急ぎなんでしょ。どうぞ。 |
ロン
| 後で良い! |
ミク
| じゃ、お兄ちゃんたちが盗んだ物は、クローン人間を普通の人間のようにしてあげる物なのね。で、フシコさんは、それを彼女に使いたい。 |
アイク
| クローン人間をばれないように人間にしてあげられるって事か? |
フシコ
| いえ、そうではないんだけどね。 |
ミク
| ロンさんの所はどうして欲しがってるのかしら? |
ロン
| さあ・・・どうしてだろう? |
ミク
| これ、フシコさんに上げた方が良いんじゃない。必要な人だし、これがなんなのかちゃんとわかってる。 |
ロン
| ちょっとまって、ミクちゃん。それは・・・ |
アイク
| そうだね。ロンさんは、論外だね。だって自分が何を取りかえそうとしているのか分かってないんだもん。 |
ロン
| それはお前らだって! |
ヴィックス
| そう。そして、俺たちにとっては、全く必要のないものだ。使い道もないし、使う必要もない。だろ?リッツ。 |
ミク
| さ、持って帰ってもらいましょう! |
ヴィックス
| 俺たちも、そろそろ疲れた。あれは、もう手放してロンさんとフシコさんで話し合って解決してもらおう。 |
リッツ
| だめだ。 |
フシコ
| リッツくん。分かって。私たちには証拠が必要なのよ、お願い。 |
ミク
| 証拠? |
フシコ
| そうなの、フォリッツを金儲けに使おうとしている連中がいるの、その・・・ |
リッツ
| だめです。なんと言われても、渡せません。 |
フシコ
| だけど、このままではクローンの人権が・・・ |
リッツ
| あれは、僕の物です。 |
ミク
| リッツ! |
ヴィックス
| くそ!(怒る)もう、何時間こうしている気なんだ!!え!3人暮らしでも狭いフラットなんだぞ!何人いるんだ!リッツ、パーティーならよそでやってくれ!! |
ミク
| お兄ちゃん。 |
ヴィックス
| それにミクは、関係ないんだ! |
セルジュ
| 私もです。 |
リッツ
| 帰ってもらえば良い。勘違いするな!その人たちを巻き込んでるのは、俺たちじゃない!ロンさんだ。 |
ヴィックス
| お前の巻いた種だろ? |
アイク
| リッツ、やっぱり、僕らには無意味なものだよ。どちらかに返そう。 |
リッツ
| うるさい。何も分からない癖に文句を言うな!!お前は、星占いでも見ていれば良いんだ!! |
アイク
| !・・・それじゃ、なんで返さないのか納得のいく説明をしてよ。 |
リッツ
| ・・・(お前のためだとは言えず)金になる! |
フシコ
| リッツ君? |
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|
| アイク、リッツを殴り別室へ。 |
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ミク
| リッツ、見損なったわ。私、帰る! |
ロン
| (通せんぼをして)頼む。 |
ミク
| (苛立って)分かってる!(部屋に戻り座る。誰かがテレビをつける) |
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テレビ
| -------本日、サバイバル・ロッタリー法案により、始めての抽選が行われました。今回の抽選で全国民から無作為に100人の男女が選ばれ、彼らの臓器が移植用に提供されます。この提供でおよそ、2000人の重篤患者の命が救われ、社会的全体の幸福に寄与する事になります。彼らの遺族には国から保証金が支給され、他の大勢の人の命を救うためとはいえ、自らの命を犠牲にした行為に永遠の尊敬が与えられます。 |
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|
| 第一幕、終わり。 |