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その日の夜。アイクが一人でいきようようと端末に向かっている。しばらくの間の後。鍵を開ける音がして、ヴィックスとリッツが入って来る。盗みに適した格好をしていても良い。アイクは、急いで二人に駆け寄る。 |
アイク | 追っ手は? |
ヴィックス | 追っ手ってなんだよ。 |
リッツ | なんの問題もなく頂いてきた。 |
ヴィックス | 後方支援のおかげだな。 |
アイク | で?ブツは?それ? |
リッツ | これだ。(アタッシュケースを見せる) |
アイク | アタッシュケース!らしいねぇ。 |
ヴィックス | (上機嫌で)アタッシュケースといえば?・・・中身はマネー!! |
アイク | お金なの? |
リッツ | まだ開けてない。工具が必要だ。 |
ヴィックス | (リッツからケースを取って振り回し)開けよう!アイク!アタッシュケースと言えば? |
アイク | アタッシュ・・・アタッシュ・ケース爆弾?
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ヴィックス、表情を変え、素早くケースをアイクに渡す。アイク思わず受け取ってしまう。 |
アイク | やだよー。 |
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ヴィックスは、上機嫌がふっ飛び、むっとして遠く離れる。アイクは逃げ腰でケースを持っている。リッツがそれを取る。 |
アイク | リッツ?でも、冗談じゃなくて、危険な物だったら?毒ガスとか爆弾とか。 |
ヴィックス | おまえ、最悪。(リッツが近付いてくると逃げながら)リッツ。どうする? |
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リッツは中身が危険物ではない事を知っているかのようにケースを事も無げに持ち上げた。 |
リッツ | 開ける。 |
ヴィックス | ソニック・ブームを使うか? |
リッツ | 電気はダメだ。 |
アイク | なんで? |
リッツ | なんでも。 |
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リッツは工具で無理矢理ケースをこじあける。ヴィックスとアイクは、息を飲む。ケースが空く。 |
アイク | リッツ。 |
ヴィックス | なんだ空っぽ? |
リッツ | いいや、ちがう。IC。 |
アイク | アイス・コーヒー? |
リッツ | 集積回路だ。予想外だ。 |
ヴィックス | 売れるのか? |
リッツ | どうだか。扱いに気をつけろ。 |
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アイクが触ろうとしていた手を引っ込める。リッツがそっと取り出し、端末のある机にのせる。 |
アイク | あのアタッシュ・ケースにこんな小さい部品が一個だよ。貴重なものに決まってる。 |
ヴィックス | すごいプログラムかもしれないじゃないか? |
アイク | 待って。何か書いてある。 |
ヴィックス | 嘘だろ。 |
アイク | ほら、ここ。 |
ヴィックス | 見えねーよ。ルーペは?ねーよな、、うちにそんな物! |
アイク | いらない。これぐらいなら、読める! |
ヴィックス | 嘘だろ?俺には字も見えねーぞ。 |
リッツ | 読んでみてくれ。 |
アイク | (じっと目を近付け、精神を統一する)うちの爺さんは、米に字を書く仕事をしてたんだって。 |
ヴィックス | 何故、米に字を? |
リッツ | 職業選択の自由だ。 |
ヴィックス | そうだけど。 |
アイク | 聞いた話だけど、テレビで東洋人が米にブッダの言葉を書いてる姿をみて、仏教徒にできて、キリスト教徒にできないはずはないってね。米にヨブ記を書いてたんだ。だから僕も読める。 |
リッツ | クリスチャンならパンに書くべきだな。それで? |
アイク | フランシスコ・・・ |
リッツ | (顔がほころぶ)フランシスコ? |
アイク | フランシスコ・ザビヌル&パウル・ペトルチアーニ・カンパニー。 |
ヴィックス | この幅にそんなか?よく読めるな。 |
アイク | その話を聞いてから練習したんだ。合った事ないからね爺さんには。 |
リッツ | しかし、いずれにしろ、これで、対した金にはならないって事がわかったな。 |
ヴィックス | なぜ? |
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リッツは立ち上がり、傍らの雑誌を取る。そのページを開いてヴィックスに突き付ける。 |
ヴィックス | 『特集:クリスマスに彼女のハートをゲットするプレゼント特集』、特集がかぶってる。 |
リッツ | ここ。 |
ヴィックス | 『第一位、ザビヌル&ペトルチアーニのゴールド・ピアス、をプレゼントしてくれるようなとっておきの人に出会いたい予感♡(ハート)』第一位っていっておいて、文章だよ。 |
リッツ | しかも頭の悪そうなな。で、どうだ? |
ヴィックス | ザビヌル&ペトルチアーニのゴールド・ピアス・・・ザビヌル&ペトルチアーニ! |
リッツ | アクセサリー・ブランドだ。フランシスコ・ザビヌル&パウル・ペトルチアーニ。今流行りの。 |
ヴィックス | つまり、フランシスコ・ザビヌル&パウル・ペトルチアーニ・カンパニーってのは、ザビヌル&ペトルチアーニというブランドというわけか。 |
リッツ | ビンゴ! |
アイク | ん?どういうこと。飲み込めない。 |
リッツ | ソフト会社や武器産業、国家機密プロジェクトなどなどの金になりそうなモノではなく、ただのアクセサリーメーカー。残念賞ってことだよ。 |
アイク | エー。 |
ヴィックス | だけどどうして、アクセサリーメーカーがICを? |
リッツ | 例えば、時計。あるいは、美容家電とか。 |
ヴィックス | それでも、化粧品なら、化学研究をしてるだろ?何か貴重なデータが。 |
リッツ | 諦めよう。一応、俺が預かって調べてみるよ。なんの部品だか。 |
アイク | そっかー。 |
リッツ | 悪かったな。みんな。 |
ヴィックス | いや、まあ、初回はこんなモンかもな。 |
リッツ | もうやらないさ。 |
ヴィックス | おもしろかったけどな。割と。 |
リッツ | ところで、アイク。チャットは? |
アイク | あ!忘れてた。ヴィックスとなんとかとかいう女が会話中。 |
ヴィックス | どれどれ?・・・お!サラ! |
アイク | ヴィックスの彼女? |
ヴィックス | ずっとアタックしてたんだよ!おい!アイク、どんな魔法を使ったんだ?サラが俺にデートを申し込んでるじゃないか。 |
アイク | まだ、返事してないよ。一応個人の決定権が・・・ |
ヴィックス | まだだと??この書き込み何時だ? |
アイク | 丁度二人が帰ってきた頃だから・・・ |
ヴィックス | おい!おい!30分も待たせてるのか!!!馬鹿! |
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ヴィックス、すぐに書き込む。リッツ覗き込んで。 |
リッツ | 「ごめんね。サラ。信じられないかもしれないけど、君からのデートの申し込みがあまりにも嬉しくて、宙に浮き上がっていたんだ。今、セントラル・アイランドを一周して戻ってきた所。デートもちろんOKさ。」 |
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リッツ、飽きれてヴィックスの顔を見る。ヴィックス、でへへと締まりなく笑う。しばらく、サラからの返事を待つ。
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ヴィックス | 「返事ありがとう。あんまり長いから、やっぱりダメなのかと思ちゃった。寛大な人で良かった!」かわいい!「明日、市立図書館の裏のハブ・キャップに12時にこれる?」やったー!! |
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ヴィックスは、端末にきちんと座り。返事を打ち返す。 |
リッツ | 運不運のバランスってのは取れてるもんだな。良かったな。ヴィックス。 |
アイク | 努力したのは僕なのに・・・。 |
ヴィックス | 悪いな、なんだか、俺だけ「当たりくじ」をひいちゃったみたいで。 |
リッツ | いや、そうでもないぞ。 |
ヴィックス | アイク!礼の言葉もないよ。 |
アイク | なんか釈然としないな。ま、3人とも当たりなしよりは良いって考える。さて、あ、占いみなきゃ。(TVを付ける) |
テレビ | 水がめ座の行動運は、最悪です。天秤座は6位ですが、気をつけて、明日は、会う人会う人泥棒です。ラッキーアイテムはひびの入った指輪。--------牡羊座のあなた。油断は禁物です。せっかく手に入れた宝物が、思わぬ凶運を呼びそう。そんな時は、手当りしだいあたりちらしてみては。 |