"CooL/lab"-art review

art review-特別編「岡山〜直島、美術鑑賞旅行記」


□プロムナード:悪霊島??
■大原美術館
□プロムナード:岡山後楽園
■直島
■地中美術館
□プロムナード:泊まる
■野外作品
■ベネッセハウス
■家プロジェクト
□プロムナード:帰路&総費用


□プロムナード:悪霊島??

 念願の「ベネッセアートサイト直島」(香川県)に行ってきました。前回、航空券が取れず、代わりに「いわき市立美術館」(福島県)へ旅行しましたが(それはそれで楽しかった!)、今回、やっと行ってきましたので、レポートしたいと思います!岡山経由で行ったので、倉敷の「大原美術館」にも行ってきました。
 ところで、あまり関係ないのですが、皆さんは、横溝正史の『悪霊島』を知っていますでしょうか?「鵺の鳴く夜に気をつけろ」という奴ですね。この小説で金田一耕助は、まず岡山・倉敷に登場します。そこにしばらく滞在して、それからフェリーで悪霊が住むという刑部島(架空の島です)に向かいます。今回の僕の旅も、初日に、岡山・倉敷を訪れ一泊。それから、翌日、フェリーで直島に向かう旅程になりました。別に、直島に悪霊は住んでませんし、鵺も鳴きませんし、凄惨な殺人事件も起こりませんが。
 出発前日(10/20)、台風23号が列島を襲い、空の便も大打撃を受けました。あわや、と思っていたのですが、当日は雨も上がり、台風のせいで混雑していた羽田空港を12:00に出発、岡山空港に到着したのは13:15、「晴れの国」と言われる岡山県の底力か、日焼けするくらいの晴天で、持ってきた防寒具は完全にお荷物です。そのまま、連絡バスに乗り込み倉敷へ。最初の目的地は「大原美術館」です。今回の旅行は推理探偵気取りではなく、現代アート探訪ですから、当然、大原美術館は外せません。

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■大原美術館

 大原美術館は、西洋の近代〜現代の美術品が主に所蔵されていますが、近代も少なめで、どちらかというと、現代アートで、もう有名になっている巨匠たちの作品を観覧できます。ジャコメッティ、フォンタナ、デ・クーニング、カルダー、サム・フランシス、ロスコ、イヴ・クライン、タピエス、アレシンスキー。もちろんモネ、ロートレック、ピカソ辺りもあるので、近現代アートの歴史というか流れを知ってから行くと、まさに教科書的に名作が揃っているという印象です。
 僕はあまり知らない画家だったのですが、フレデリック、レオンの「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」は大画面で大迫力の絵画。しばらく声を失ってしまいました。あとで調べてみるとその大きさは、高さ161cm、幅なんと1,100cmです。25年かけて書いた大作ですが、展示位置が高すぎるのがやや難。
 また、最近、どこの美術館に行っても逃げられてしまう(展示から外されている)イヴ・クラインにやっと出会えたのが嬉しかったです。ただ、デュフィやフォートリエなど、観たかった作品に逃げられてしまったので、また機会を見つけて是非行こうと思います。
 以上は本館で、分館には、通常、日本の近現代の作品が展示されています。ただ、今回は、《VOCA1994-2003 10年の受賞作品展》を開催しており、展示は全て外されていました。しかし、逆に、ここで、まさにこの10年という現代の日本のアートを展覧できたのは、とても有意義でした。2次元の作品が多かったので立体も観たかったのですが、今回の旅行が現代アート探訪という事で、完全にその準備というか、それ用の眼が開けた瞬間でした。というわけで、もう一度、本館を観て、大原美術館を後にしました。
 直島で体験できるアートは、大原美術館の現代アートより、世代が若いものが中心なので、直島に行く前に「大原美術館」に寄っておくコースはお勧めです。印象派の後期から現在に至るアートの流れを思いっきり体感できます!! 大原美術館のサイト(作品も見る事が出来ます)

→大原美術館のホームページ

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□プロムナード:岡山後楽園

 大原美術館は17:00閉館なので、時間が余りました。倉敷と言えば、『倉敷チボリ公園』。僕はデンマーク好きだし、話の種にと思い足を運んでみましたが・・・。まず、一人で遊園地というのは良くないという事、さらに『倉敷チボリ公園』はガラガラ(人影が見当たらない)で、吃驚する程、何もする事がなく、すべき事もなく、1時間も経たないうちに出てきてしまいました。本当はここで食事をと思ったのですが、やむなく岡山のホテルに戻り、ホテル内のレストランで一人コースを食べてしまいました。仔羊は美味でしたが、思わぬ出費です・・・。
 翌日は早起きして、岡山後楽園に足を運びました。日本3大名園です。天気も良く、庭園好きの僕にはたまりません。しかし、後楽園はすごい事になっていました。普通、庭園ですから、歩いていって行き止まるという事はないのですが、一昨日の台風で木が倒れ、そこらじゅうで通行止めが。庭園のはずがまるで迷路。しかし本当に美しい庭園で、なんといっても佳い匂いがするのです。朝のお散歩には贅沢すぎるかもしれません。
 さて、ここで、旅の友と合流です。岡山駅で待ち合わせをし、いざ、直島に向かいます。岡山駅から42分かけて、宇野に出ます。港です。ここで、僕は生まれて始めて瀬戸内海を見ました。色が違うんですね、瀬戸内海は。フェリーポート(というほど豪華ではない)から、すぐそこに見えるのが、直島です。小さいフェリーで20分かけて、直島に向かいます。

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■直島

 ここで、改めて説明しますが、「ベネッセアートサイト直島」は、瀬戸内海に浮かぶ直島(香川県)を舞台にベネッセが展開しているアート活動。現代アート群落と言っても良いくらい、現代アートの施設、作品が「場」として提供されている素晴らしい島です。
 金田一耕助シリーズに出て来るここら辺の島の描写には、「花崗岩」という言葉が眼につきますが、フェリーから眺める岩肌もそんな感じです。あっという間に、直島の宮ノ浦という港に降り立ちます。そして、ここからは、レンタサイクルです(バスもあります)。島の観光案内所で自転車を借りて、ロードマップを頼りに、晴天の瀬戸内海を臨みながら、サイクリングです。台風で土砂崩れがあり、一部の道が交通規制だったため、割と遠回りですが、自転車は気持ち良い!
 やがて、けっこう汗ばんできた頃、目的地に着きました!ベネッセアートサイトには、2つの宿泊施設が用意されています。一つはベネッセハウスステイ、これは美術館内(!)のホテルに泊まる形で、客室内にもアート作品があったりします。ただ、ちょっと高い。もう一つは若者向け、シーサイドパークステイといって、海辺にパオやテントが設えられているキャンプ村です。でも想像のキャンプ村より設備は良く、パオといってもコンドミニアムのようなものです。僕らは、このパオに宿泊です。

→ベネッセアートサイト直島のホームページ

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■地中美術館

 地中美術館は、2004年7月にオープンしたばかりのベネッセアートサイトの新しい試みです。クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルというたった3人のアーティストの作品を永久に展示するための施設です。最近増えているのですが、ソフト(展示作品)を入れ替えられる美術館ではなく、もうその作品用の美術館です。安藤忠雄の設計になる美術館は文字どおり地中にあるので、建築作品なのに外観がありません。あるのは埋没した「空間」のみ。古墳のようでタイムカプセルの用で不思議な空間で、この美術館自体が一つの美術作品と言えます。

 クロード・モネは、3人のアーティストの中で、唯一、すでに死んでいる芸術家です。そして、僕は別段モネが好きではありません。実際、大原美術館でも「睡蓮」がありましたが、それ程注目はしませんでした。
 地中美術館のピラミッドの内部のような不思議な回廊、通路を通り抜け、モネ室に辿り着きます。2〜3m規模の「睡蓮」のシリーズが5点。白亜の玄室のような部屋に展示されています。角のない白い壁、天井の窓から、板一枚で遮られ、壁伝いに部屋を満たす光、そして、足元に敷き詰められた70万個の大理石のモザイクタイル。空間により演出される事で、絵の印象は全く変わるという事に驚き、印象派=モネ=睡蓮という固定観念を完全に打ち砕かれる瞬間でした。僕らが眼にしているのは(というより浸かっているのは)、光と反射であり、実体はそのはるか向こうにあってもなくても良い程度に存在するに過ぎないのです。ただ、光を認識するためには、実体が必要だと思い込んでいたに過ぎないような気がします。
 水中にいるという感じは、実際に水中にいるのでなければ、光の反映の仕方が陸上世界とは違うからで、このモネ室にいるというのも、まさにそういう感じです。水中ではないが、陸上世界でもないような。とにかく、ここは、モネの玄室、光の玄室というべき、一種の礼拝所のような雰囲気です。

 ジェームズ・タレルの作品も光の作品です。「アフラム、ペール・ブルー」「オープン・フィールド」「オープン・スカイ」の3作品です。まず度胆を抜かれたのが「オープン・フィールド」です。その部屋に入ると、青い巨大な矩形が見えます。それは、真っ青に塗られた絵に見えます。しかし、絵の前には、階段が設えられており、絵の真正面まで行けるようになっています。そこまで近付くと分かるのですが、これは絵ではなく、光で満たされた空間への窓なのです。学芸員の指示に従い、僕らは、その絵の中に入って行きます。あるのは光のみ、光しかないという事は見えないも同然です。「奥まで歩いていけるが、先は、壁ではなく奈落になっているので、行き過ぎると落ちる。これ以上進むと危ないという所でアラ−ムがなるので、止まるように」と言われ、恐る恐る歩いて行きます。足下は奥に向かってやや下っているスロープです。僕は、ふと、ヨモツ平坂を思い出しました。今、光の粒子に包まれて、「量子力学的黄泉の国」に向かって、降りて行ってるようなそんな幻想です。
 さて、アラームがなりました。はっとして、我に帰って、現世を目指すため振り返ります。そこには!!、まあ、その辺りは、実際体験されて下さい。文章で美術作品を示すなんて、馬鹿げた事をしてました(反省)。
「オープン・スカイ」は、白い大理石の部屋があり、壁にそって大理石がベンチ上になっています。そこに座って(別に地面でも、どこに座っても寝ても良いんですが)上を見上げると、天井に矩形の窓がポッカリ空いていて、空が見えます。ただそれだけです。まわりの壁が白い分、より青さが増して見える気がします。ガラスなどは入っていないので、雨が降れば吹き込んでくるそうです。さて、そこで、思うのです。私たちは、普段空を見るか、という事。美術作品として矩形の窓枠に閉じ込められて、やっと見る。更に言えば、美術館では、額縁に入っているモノは作品として認識せよ、という不文律が働く。この作品を見ていろいろ解釈はできる。だけど、こんな青い空は東京ではなかなか見られないなぁ。
 そして、この作品の真価は、実は、日没前後のほんの45分にかけて表出されるのです。それは予約が必要なナイト・プログラム。地中美術館は、自然光のみで展示を行っているため、17:00閉館なのですが、このプログラムを予約すると、その後美術館に入れて、驚くべき空の変容を体験する事ができるのです。日没から徐々に色が変わって行く空、さらにこの部屋の内部の色がLEDによって微妙に変化していく、そうすると不思議、空の色が・・・。簡単に言えば、補色の関係。でも眼に映るものすごい!!!みんなで、床やベンチに寝っころがって、45分間、黙って空を見る。時に笑ったり、歓声を上げたり。
 この作品もいろいろ解釈を施す事はできるでしょう。機械の光と自然の光の対話とかつまらない事を言う事はいくらでもできそうだけど、僕が感じたのは、「空って何色?」って問われて、答えられない自分のつまらなさに気付かされた幸福感。どれが本当の空の色?そして、この作品は錯覚を利用しているので、自分の眼で見るしかありません。

 ウォルター・デ・マリアの作品は、「タイム/タイムレス/ノー・タイム」の1点のみ。1点のみといっても、それは、ホール程の空間の作品。宮殿の謁見の間のような大階段、中央に巨大な花崗岩の球体(直径2m以上)が、どーんと。そこに映り混む空。マホガニー材に金箔を施した、三角柱、四角柱、五角柱がその周りに並んでいる。パイプオルガンのようでもあり、何かの観衆のようでもある。この作品は言葉で言い表わすのは難しい。それは、その空間、観察者としての僕らによって侵襲されるが、全く動じない、揺るがない空間。角度と円のアンバランスな関係、なのに動じない。いや、動じたくないと思わせるのか。しばらくしてはっきり感じたのだけど、これは、古典的な何かのような気がします。

→地中美術館のホームページ

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□プロムナード:泊まる

 直島の他の場所にも宿泊施設はあるようですが、「ベネッセアートサイト」には2パターンの宿泊施設があります。一つはベネッセハウスという「ベネッセアートサイト」の基幹となる建物で、美術館と客室が一つの建物にある本館と、そこからルフトカーで移動する丘の上の別館です。この建物自体が安藤忠雄の設計による建築作品で、美術作品は、客室にまで展示されているそうです。しかし、ホテルって事でやっぱり高いので、僕のような貧乏旅行に最適なのがもう一つのパターン、シーサイドパークです。
 ここにはパオとテントが常設されていて、そこに泊まる事が出来ます。今回泊まったのはパオなので、テントの方は分かりませんが、パオには4台の決して狭くないベッドが壁を一周するように置かれ、中央にテーブルがあります。パオなので、天井が高く、狭いイメージは全くありません。タオルなども用意されていますが、さすがにテントもパオも、バス・トイレは付いていません。でもお風呂は大浴場が24時間で入れるようになっているので、ホテルなどの手狭なお風呂より良いかもしれません。夜中に満天の星の下を歩いてトイレにいくのも、またオツなものです。大人になってからはあまり体験できないキャンプ生活が、なんの苦もなく行えます。冷蔵庫もあり、暖房もあり、給湯器やアイスメーカーも、サ−ビステントという所にあるので、問題なく宿泊できます。
 しかもそこに宿泊しているのは、現代美術好きの人々で、マナーが悪いはずもなく(これは偏見かもしれないけど)快適です。というか、要するに相当狭い範囲で趣味の会う人々に囲まれているというのは、落ち着くものなのかもしれません(でもそういう危ないコミュニティもあるよな)。と自問自答を繰り返しながら、夜は更けて行きます。ちなみに僕はマナーが良かったかと言えば、旅の友とビールのロング缶を飲んでは買い、飲んでは買いで、夜更けまで起きていたので、迷惑だったかも。
 それと、スタッフの人に、部屋に食べ物を置いておくと、たぬきが侵入して食べられるので、と注意されたら決して甘く見ては行けません。僕らも「空けてある食べ物はないから大丈夫」とたかを括っていたら、案の定、スナック菓子を食い荒らされていました・・・。

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■野外作品

 シーサイドパークからベネッセハウスへの海岸線周辺には、野外彫刻などの野外作品が多数あるので、燦々と日の降り注ぐ、朝のビーチを散歩しながら、いろいろな作品に出会う事が出来ます。が、今回は、前日の台風の影響で、ほとんどの作品が「避難」していたため、見学は限られたものになりました。残念。ちなみに野外作品は手元のリストによると13作品。目玉展示は蔡國強の『文化大混浴 直島のためのプロジェクト』で、文化大革命を戯れの一部に還元してしまうようなネーミングで、文字どおりみんなで露天風呂に入るという美術作品です。おそらく全く知らない人と裸で入る事に意味があるような気がしますが、実際は、貸し切り制で、水着持参です。斜面にいくつもの奇岩といくつものジャグジー風のバスが脈絡なく置かれた異様な露天風呂、是非入ろうと水着も持って行ったのですが、あいにく台風の影響で中止になりました。  片瀬和夫の『茶のめ』は本当に素敵な作品です。野外作品は風景もその一部なのですが、この作品と風景のマッチングは最高です。ウォルター・デ・マリアはまたしても、巨大な球体をおいてみせます。なんとなく彼の作品にはスタンリー・キューブリックの、というか現代演劇やオペラの美術を連想させる所があります。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドラマーという過去のせいなのでしょうか(関係ないか)。ニキ・ド・サンファールの作品は箱根彫刻の森美術館の『ミス・ブラック・パワー』の印象が強いので、ここの作品は小振りな印象がありますね。有名な草間弥生の『南瓜』は、以前、嵐の日に海に落ちた所を、スタッフが飛び込んで救ったという敬意があるので、厳戒体勢でしまわれていました・・・。他にジョージ・リッキー、大竹伸朗、カレル・アペル、ダン・グラハムなどの作品が野外作品として展示されています。美術作品はいつかは変色し朽ちるものですが、野外作品は特に、過酷な環境で消滅に向かって行きます。皆様、どうぞお早めにご覧下さい(笑)

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■ベネッセハウス

 先程、宿泊の所で紹介しましたが、このベネッセハウスが、いわば本館となる美術館です。3層の構成で、手元のリストでは45作品が展示されているようです。 ジャコメッティ、セザール、ジャスパー・ジョーンズ、サム・フランシス、トゥオンブリー、ポロック、ホックニー、ラウシェンバーグ、ステラ、ポロフスキー、ウェッセルマン(丁度、これを書いている頃、12/17に訃報が舞い込みましたね・・・)、ウォーホル、バスキア、イヴ・クライン、シーガル、クネリス、ナウマン、宮島達男、川俣正、・・・そうそうたるメンバーです。日本の作家もいますが、何故書かないかというと、漢字変換が面倒だからです(ごめんなさい。でも下で取り上げますのでね)。
 やはり、言葉で美術作品を語るのもアレですし、僕は美術の専門家でもないので、ごく簡単に、気になった作品を。柳幸典の『バンザイコーナー』、万歳するウルトラマン人形の連鎖ですね。この手の作品は、正直あまり好きではないのですが、何故好きじゃないと思うのかを問いつめるとおもしろいのです。リチャード・ロング『60分歩く』は60分歩いて目に映ったものが文字で列記されています。掛け軸のような詩のようなアートです。美術作品に文字を登場させたのも現代美術ですが、結局、写本とか掛け軸とか、昔は文字と一緒だったんですよね。ステラの作品は、彼の「転換後」の巨大作品が2つ展示されています。「転換後」を見るのは初めてだったので、驚きました。ホックニーの『ホテル・アカトラン 中庭の回遊』は、もしお金持ちになったらまっさきに購入したい作品です。前にレビューを書いた「20世紀版画の軌跡展」で、同じホテル・アカトランを主題にした「ムーヴィング・フォーカス」シリーズを2点観た事があったのですが、この作品大好きです。お金持ちになったらホテル・アカトラン(メキシコ)にも行ってみたい・・・。派手な作品という意味ではブルース・ナウマンのネオン管を使った『100生きて死ね』も見ごたえがあります。ちょうど図書館というか資料室にブルース・ナウマンの画集(絵ではないけど)が何冊かあったので興味深く拝見しました。手にとって惚れました。バスキアの作品は、レストランの中に入らないと見られないので、注意です。野外部分に杉本博司の『タイム・エクスポーズド』があります。これは必見です。僕はこの写真の連作を観た後、題名などが書いてあるパネルを見て相当衝撃を受けました。絵を見た後題名(というか説明)を見てこれほど衝撃を受けたのはアンドレ・セラーノの『弧を描く精液』以来です。さて、強烈な個性を放つ作家と作品の連続攻撃に、目も体もたじたじになった所で、最後に、最高にお勧めの作品があります。須田悦弘の『雑草』です。この作品をこの美術館内で発見するのは至難の技のように思えます。木彫の草を本来あるはずもない建物の壁や天井に設置する作風で知られているアーティストですが、相当目をこらすか、地図を頼りに発見して下さい。作品の大きさや衝撃、そこに表現された様々な言葉や思想、見方、見え方の転換、そういったものも現代アートとして魅力的なのですが、この、ただ「ある」という不思議さに、僕は惹かれました。この美術館で最後に見た作品で、見事に、締めくくってくれたように思えます。あと、ホックニーはリトグラフなら安いかしら・・・。

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■家プロジェクト

 直島の町(本村地区)にあった古い家屋を改修し、アーティストが家の空間そのものを作品化するプロジェクトです。現在は、4つの作品(4軒の家)があります。僕が訪れた時には、「きんざ」(内藤礼「このことを」)が修復作業中で、残る3つを鑑賞(来訪)しました。レンタサイクルを使って島の南岸のシーサイドパークから、島の東岸本村地区に向かいます。それにしても、山あり谷ありという程ではないのですが、やはり島なので、上り坂あり、下り坂あり、漁港があったり、島唯一の小中学校があったり。そして住居が立ち並ぶ地区というのは、割と入り組んでいる事が多く、迷いながらのサイクリングとなりました。他にも何組かのサイクリング組がやはり右往左往しながら、この道じゃない、あの道だという風に走り回っていました。これは一種のオリエンテーリング??
特に、途中で自転車を乗り捨てて小山を登って行く「護王神社」(杉本博司「Appropriate Proportion」)は難関です。これだけは、民家ではなく、寂れた神社を改修しながらアートにしてしまった珍しい作品です。神社脇の小さな扉から入ります。ちょうどピラミッドとかの隠し扉みたいな感じです。すると人一人通るのがやっとの狭い通路が続きます。ガイドの方が持っている懐中電灯以外は真っ暗です。やがて、やや広い空間に出ます。暗闇をライトで照らすとクリスタルのような階段が地中から天井に続いているのが見えます。それは、やがて地上に現れて、神社に続く石階段になっていくのです。細かい事は言及を差し控えますが、なかなか「思わせる」アートです。ガイドさんがついているので、好き勝手に体験できないのが残念ですが、民俗学的な知識など全く皆無なのに、必死にその辺りの引き出しを探してしまいました。「きんざ」(宮島達男「Sea of Time '98(時の海 '98)」「Naoshima's Counter Window」など)は、普通の日本家屋ですが、宮島達男の例のデジタルカウンターと日本家屋の意外な融合が見事です。「Sea of Time '98(時の海 '98)は人気が高いらしく大勢の人が、過ぎ去る時間も忘れて鑑賞していました。始めてみると、非常に風変わりな光景なのですが、しばらくいると日本家屋とその水やカウンターの色彩に差異がなくなってきます。同時にデジタルカウンターでこれだけ時と持続を意識させているのに、結果として時間を感じなくなるような感覚がとても愉快です。「Naoshima's Counter Window」は、一見、通り過ぎてしまうような溶け込み方をしています。ただ、この作品は一種のトリックアート的に機能しているので、発見の喜びが鑑賞の喜びに勝ります(それもアートです!)。またインダストリアル・デザインとして一見の価値があります。危なげな階段の上にも作品がありますのでお忘れなく。
 家プロジェクトの圧巻は、南寺(ジェームズ・タレル「Backside of the Moon」)です。地中美術館でも圧巻だったタレルの光の体験ができます。南寺は安藤忠雄の設計ですが、内部は完全な闇です。これまで体験した事のないような本当の闇です。なので、鑑賞(体験)をするための椅子までガイドの人が手を引いて案内してくれます。触覚だけがたよりです。椅子に座り長い時間が経過します。はっきりいって恐怖です。声を出さぬよう注意されているので、ほとんど感覚遮断の状態でただただ指示に従って真っ暗な前方を注視します。なんとなく何かが見えるような気がしますが幻覚もしれません。そして10分程経った時・・・でもこれは、南寺を出た時、その事を誰にも話さないように注意されているので、言えません(笑)当たり前の事ですが、ご自身で初体験される時、アートの真価が発揮されるのです。

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□プロムナード:帰路&総費用

 さて、気になるお値段ですが・・・というわけで、ここまでのアート作品の解説や解題については、もっともっと優れた物が雑誌やネット上にたくさんあるでしょうから、ここで、ごく個人的な旅費の話しをしようと思います。東京からこの旅程を辿るといくらかかるのか、そんなお話しです。
 直島へは、岡山(飛行機かJR)か、高松(飛行機)から入ります。僕のとったルートは岡山から入って、帰りは高松へ出るというコースです。こうする事で岡山で大原美術館によることができます。逆に高松で時間を取ればイサムノグチ庭園美術館に行けるでしょう。岡山までJRや飛行機の単独切符を買うより、パックの方が安いので、往復航空券+岡山1泊みたいなビジネスマン用のパックが最適です。しかも、帰りの日にちをずらしたり、帰路の空港を選べたりするものをチョイスしました。ここで紹介するのは、2004年10月21日に出発した場合の値段です。
移動・宿泊にかかる料金 地中美術館入場料\2,000 ベネッセハウス 高松空港〜羽田空港のエア
羽田空港〜岡山空港ANA1時間15分\23,800(★も含む)
岡山空港〜倉敷空港連絡バス35分\1,000
倉敷〜岡山JR15分\320
岡山駅近くのホテル1泊
岡山〜宇野JR42分\570
宇野港〜宮ノ浦四国汽船フェリー20分\280
シーサイドパークパオ夕朝食付1泊\8,400
宮ノ浦〜高松港四国汽船フェリー60分\510
高松〜高松空港コトデンバス40分\740
高松空港〜羽田空港ANA1時間15分
大原美術館入館料\1,000

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