器楽曲
《弦楽四重奏曲》1990年以前
【編成】ヴァイオリン1、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ
 中学時代の曲なので、出来不出来は別として、ちゃんと記譜されていて形式もある程度考えられているようなので精神的にop.1といえる曲。第1楽章は、変拍子的で擬古典的な曲想、第2楽章は、牧歌的な曲。
《Scenic Overture》1994年頃
【編成】フルート、クラリネット、オーボエ(イングリッシュ・ホルン)、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ、ハープ、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ティンパニ、カウベル、トライアングル、タンバリン、ドラム
 オーケストラとピアノ、ドラムのためのセミ・クラシック的な序曲。ジャズの要素も持つ。
《弦楽のためのオスティナート》
【編成】ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
 弦楽合奏のための、繰り返しを多用したオスティナート。
《フルートとピアノのためのパストル》1996年
【編成】フルート、ピアノ
「Adagio quasi Largo Pastorale」 パストルは、パストラーレとパステルを合わせた造語で、曲は牧歌的で静かな曲。構成は単純で、ピアノ伴奏にフルートのメロディというもの。《Sa/lomé》で共演したフルートの上野洋に献呈。このメロディは《マイ・レクイエム》のサンクトゥスにも転用されている。
《Sa/lomé》1996年
【編成】フルート、ピアノ(キーボード)、コントラバス、女声ボイス×2
〈Die Tiefsee〉(深海)
〈RISE〉(上昇)
〈Improvization#1〉 (Mixolydian mode)
〈Sieh die Mondscheibe〉(月の踊り)
〈Counting Song〉(ヨカナーンの死)
〈Improvization#2〉
 パフォーマンス集団「Doktor GriPHin」のインスタレーション+パフォーマンス『Sa/lomé』のために作曲された音楽。 オスカー・ワイルドの『サロメ』を下敷きにしています。編成はフルート、コントラバス、ピアノ(キーボード)、女声ボイス×2です。それぞれの楽器にはエフェクターが繋がれ、特殊奏法も多く使用されました。
1.〈Die Tiefsee〉
3楽器をそれぞれ別の調に設定した上で、おおまかなモチーフ(ワグナーの生成の動機なども引用)による即興演奏。ボイスは、英語とドイツ語の「深海」に関するテクストをエフェクトのかかったマイクで「つぶやく」。演奏は30分。
2.〈RISE〉
フルートの独奏曲です。一応、調性をかなり希薄にしてあるのですが、時折、和声的なフレーズが出て来て、それがすごく、遠くに感じるような幻想的な曲です。
3.〈Improvization〉(Mixolydian mode)
3楽器(フルート、コントラバス、キーボード)のミクソリディアン・モードによる完全な即興。
4.〈Sieh die Mondscheibe〉
ボイス二人をソプラノ、メゾソプラノとしての二重唱です。サロメが「月」に影響される様が、カノンとして動作され、同時に歌唱されます。
5.〈Counting Song〉
ヨカナーンの死へのカウントです。死刑台への行進というより、カウントダウンのようにしました。一音ずつ増えていく音型(イ短調のスケール)を、ボイス1、ボイス2、フルート、コントラバスが、ズレて演奏していき、徐々に不協和音が増加して行く曲。
6.〈Improvization#2〉
前曲のモチーフからのフルートとコントラバスによる破壊的な即興です。
 これらのうち1,2,4,5が、なんらかの作曲行為をしたものです。さらに、舞台では電子音響による別の曲(熊谷直・作)も並行して流れます。ただし台詞はありません。初演は1996年9月、上野洋(Fl)、河崎純(Cb)、島田香奈、石島聖子(Voice)、遠藤良太(Key,指揮)です。
《Phaëthon》1998年
【編成】ピアノ、アコーディオン、オルガン、アルトサックス、クラリネット、バスクラリネット、コントラバス、打楽器(ティンバレス、ボンゴ、カウベル、トーンタンク)
〈プレリュード:モノディ〉
〈イントラーダ〉
〈イムヌス〉
〈バリエーションズ〉
〈オスティナート〉
〈モノディ〉
〈レチタティーヴォ〉
 パフォーマンス集団「Doktor Griffin」のギリシア神話「パエトーン」に基づく舞踏的パフォーマンスのための曲です。 四人の演奏家のための付随音楽で、初演時の編成はピアノ、アコーディオン、オルガン、コントラバス、アルトサックス、クラリネット、バスクラリネット、打楽器(ティンバレス、ボンゴ、カウベル、トーンタンクなど)でした。
1.〈プレリュード:モノディ〉「ほどよくゆっくりと、霧の中のように」
瞑想的な雰囲気の中、全体を貫く一つのメロディ(モノディの動機)がとぎれとぎれに奏される。やがて、たたきつける暴力的なビートが刻まれ、次の曲への経過となる。
2.〈イントラーダ〉「祝祭的に」
四度進行によるファンファーレ主題のあと、ピアノとコントラバスのバッキング・リフに導かれて、言語的なパッセージが、サックスとオルガンによって奏される。
3.〈イムヌス〉「静謐に」
コラール--トッカータ--コラールの三部形式。コラールは、ピアノのハーモニーが転調を繰り返しながら進んでいき、アコーディオンとコントラバスが、一定の音をパルス的に足していく。トッカータは、ピアノ(もしくはサックス、チェロ)によるアルペッジョ型の和音進行になり、一瞬のトゥッティのあと、ピアノのコラールが再現、ただし再現後は各楽器によるノイズが混入する。
  
4.〈バリエーションズ〉「一定のテンポで、自由に」
小節線を明示した図形楽譜とその番号によってみちびかれる即興的な変奏曲。第5変奏まである。
5.〈オスティナート〉
増幅されるオスティナート音型が、法則的な転調をとげる。各楽器の音型をサンプリングしテープで流す。演奏者は全員打楽器を叩く。
6.〈モノディ〉
モノディの旋律の完全な形での曲。いくつかの部分に分かれた10分におよぶ曲。エンドクレジット的かもしれない。
7.〈レチタティーヴォ〉
パーカッションとアコーディオンの即興的掛け合い。強弱の極端を行く短い曲。
 初演は、1998年4月、青木菜穂子(アコーディオン、ピアノ)、杉本靖(サックス、クラリネット)、河崎純(コントラバス)、遠藤良太(オルガン、ピアノ、パーカッションと指揮)