映像について | |
今回は、インスタレーション的な舞台を表現するのに、映像を多用しました。舞台奥の壁に埋め込まれるように4台のモニターと、舞台中央の出はけ用のスリット(いわばのれんのように布が垂れている)に投射されるプロジェクターによる大画面の5つの画面にそれぞれいろいろな物が写し出されます。テクスト以外にも、例えば、ティラたちが、ドラッグで幻覚を見ているシーンでは、サイケデリックな映像を流し、ジョンが幻想に溺れていくシーンでは、ジョンの日常や夢の中をそれぞれのモニター同士の会話のように表しました。ティラが観客には見えない猫を相手に1シーン独白をするシーンでは多数の猫のイメージを投影しましたし、他にもオルタナティブなアニメやニュ−ス映像、監獄の中のジュースを捉える監視カメラの映像等を使いました。このためにビデオデッキも複数用意し、モニターのスイッチングができるよう、スイッチャーを2台導入し、音響や照明と同じくらいの忙しさで、映像オペレーターに働いてもらいました(しかも依頼したのが、公演の直前!)。 映像においてもテクストの提示を指定したので、今回の芝居は、役者の言葉以外のテクストに溢れていると言えます。映像で表示する事を指定したテクストは以下の通りです。 ○開演前、監獄の中のジュースの映像に現われた文字 「Brother?」 「How many brother do I have?」 「News?」 「Do you like "Game"?」 「Are you sleeping?」 「Psychedelic?」 「Prey on!!」 「補食する?」 特に「Prey on!!」には補食するという意味だけでなく、食いものにする。あるいは、"play on"(ゲームを)プレイし続けるといった意味も隠れていると思います。 ○ジュースの掌のバーコードが走査され、表示された文字。 「囚人ID:004F-R542G1411」 「ジュバル・レミックス(22) Jubal Remix」 「レイプ犯 a rapist」 「ロウアー・サークルでホテルレイプを強要。C.C.により逮捕後、拘留。」 ○カーテンコール後の映像(再び、監獄の中のジュースが映り・・・) 「THE GAME IS OVER---」 「THE PARTY GOES ON...」 「ゲームは終る。そして、パーティーは続く」と表示され終わります。この続いたパーティーの先の話をいつか書くつもりです。 | |
音楽について | |
今回は、以下の4つの音楽を使う事を脚本上で指定しました(他はオルタナティブ・ロックやガレージを使うよう指示)。まず、観客が会場に入ると、モニターとかスクリーンに映像が映っていて、ちょっとしたインスタレーションのような雰囲気になっているわけですが、そこで、オペラ「トリスタンとイゾルデ」〜愛の死(ワーグナー)が流れています。演出的には、最初クラシックで、「どんな芝居だ?」と思わせておき、その後、パンクへ移行するのですが、「トリスタンとイゾルデ」は一種の惚れ薬によって引き起こされる悲劇です。つまり、まさに、薬にコントロールされるお話しなわけです。 さらに、開幕直前から、映像も変わり、「ジークフリート牧歌」(ワーグナー)が流れます。ジークフリートというのは(ワーグナーの息子でもあるのですが)、彼のオペラに出てくる主人公で、彼は、騙され飲まされた忘れ薬によって悲劇的死を遂げます。結局、ジークフリートは、恐れや疑いを知らない英雄、つまり愚者です。映像内の囚われのジュースも騙され虜囚にあります。純真無垢さが、必ずマイナスになる世界を暗示しているわけです。 さらに、シーンでいうと、ティラが、見えない猫に語りかけるシーンで、ずーとかかっている曲に、「ピアノ協奏曲ト長調」〜第二楽章(ラヴェル)が指定されています。このシーンは、1シーンまるまるティラの独り言ですから、最初から、この曲の冒頭の部分の長さに会わせて脚本を書きました。音楽が決定的にリリカルなのですが、作者がラヴェル好き、と言う事とラヴェルが猫好きという以外に特に深い根拠はありません。 そして、芝居のために作ったオリジナルのテーマソング『We Understand』です。エンディングシーンで流される曲です。作者ができもしない英語でテクストを書き、 尚真信帆("CooL/lab")が作曲・プログラミングをして、manabeckがギターをいれました。テクストはこの芝居のコンテンツを、もしかしたら芝居以上に現しているかもしれません。 | |
We Understand | |
*『We Understand』デモトラック(MP3、3.1MB) If you push "A" key, What will happen to me? 君がAボタンを押したら僕の何かが変わるだろうか Even if I am under your thumb. 僕が君のその指の下にいるとして If I controll you, Can you still function as yourself? 僕が君をコントロールしたなら、君は、まだ君でいられるだろうか Will game come to copy a human relations? ゲームは、人間関係の複製たりうるのか TV shows clamor. Morning papers exclaim and deplore. テレビは騒いでいるし、新聞は叫んだり、嘆いたりしている Still,Why don't we feel? Why no need to we feel? なのに・・・僕らが感じないのはなぜ? 僕らが感じなくていいのはなぜ? Why should not we feel any more? Understand! 僕らがもう何も感じるべきではないのはなぜ? 分かっている If games command you, Can you injure something? ゲームが命令すれば、君は何かを傷つけることができるか。 Without an eye on what sets hard apart from soft. ソフト(虚構)とハード(現実)の違いに何の注意も払わずに。 Drag'n'Drop goes on and on. 終わりのないドラッグ・アンド・ドロップ Copy'n'Paste is thoughtless and too heartless. 無分別で、残酷なコピー・アンド・ペースト。 Still, Why are you asleep? Why do you wanna sleep? なのに・・・なぜ君は眠っているの? なぜ、君は眠っていたいの? Why can you keep sleeping forever? Understand! なぜ、君は眠り続けていられるの? 分かっている *レコ−ディング時の歌詞とは一部違いがあります。 | |