SPEAKER370 volume.02『コントローラー370』(CONTROLLER370)-Alternative play-


あらすじ
舞台
 21世紀初頭。ややエクストリームに発展した近未来。世界第一都市としては、十年程前に見放された某都市。内陸に向かってカーブした港湾に浮かぶ人工島(セントラルアイランド)を中心に、それを取り囲む港湾部からなる都市。19世紀末のウィーンでおこったようなリング現象がここでも見られ、セントラルアイランドと周辺部において明らかな階層的、人種的分離(むしろ隔離)が顕著。特に島を取り囲む海は、意識的にも、物理的にも、彼らを分断し、それをつなぐ橋は、中世城塞都市の門のように自由な往来を制限している。(その他の、社会・文化的理解には、各脚注が役に立つだろう。)  舞台となるのは、周辺部の中でも、特にセントラルの上流階級から最も忌避される荒んだ一角である。始めのうちは芸術家を気取った貧乏な若者たちが集まったが、徐々に移民の流入と芸術上の挫折の鬱積から、なかばスラム化している。今でも、芸術家は多く集まっており、その栄光の時代を回顧して、「ネオ・トライベッカ」などと呼称されているが、都市の地理区分上は、ブロックDと言われる地域である。主な物語は、この町のあるアパートの一室で起こる。
Open [GAME #1]
 ある都市の周辺地域のすさんだ一角。
「トリスタンとイゾルデ」が流れる白い空間。グリーンの髪の少年が監獄の中でテレビゲームをしている映像が、舞台上のスクリーンとモニターに映し出される。様々な文字が、同時に映し出される。やがて、男の掌のバーコードが走査されると、彼の認識番号が表示され、「ジュバル・レミックス(22)--レイプ犯--ロウアー・サークルでホテルレイプを強要。C.C.により逮捕後、拘留」の文字が出る。音楽が「ジークフリート牧歌」に変る。
Scene1 [Psychedelic #1]
 突然、パンキッシュな音楽とともに、スクリーンをつきやぶって二人の女が登場する。アディとティラである。二人はトリップし、わけのわからないことを口走っている。
Scene2 [Room #1]
 二人の部屋。ティラがTVで"TETSUKO'S ROOM"を観ていると、アディがなんくせをつけはじめる。彼女はデートの準備に余念がない。
Scene3 [Psychedelic #2--Fake rape scheme]
 再びトリップ状態にある二人。薬がきれるとアディがある金稼ぎの方法を提案する。彼女はティラがシチズン・コップ(C.C.)の資格を持っており、その資格があれば万引きや麻薬取り引きなどの一部の犯罪者を現行犯逮捕出来ることから、レイプ事件を偽装しようと言い出す。確かに犯人が逮捕されてしまえば、未遂であれレイプ被害者には国や女性保護団体から様々な金が入る。つまり、アディがレイプされる役で、ティラがその犯人を捕まえれば良いというわけだ。アディの「失敗しても、誰も攻められない。ゲーム感覚でいいのよ。」という言葉にティラはOKを出す。
Scene4 [Game on the Street]
  深夜の路上に出た二人は携帯電話で連絡をとりながら、「カモ」がくるのを待っている。そこにあきらかにアッパークラスの子息と思われる緑の髪の少年が通りかかる。ティラはアディのお色気作戦は通用しないからシナリオ通りに決行しろと言うが、アディは色気を出し少年を誘惑しようとする。しかし彼がのらないので、シナリオ通り落した鍵を探すのを手伝って欲しいと申し出る。少年はアディについて暗闇に消える。少年が鍵をみつけたところに、ティラが現われ銃をつきつけ、少年を逮捕してしまう。少年がいくら無実を証明しようとしても、アディはこの人に襲われたと泣き真似をし、ティラは少年の持っている鍵が、バックホテルのものだから、彼にレイプの意思があったことを証明できるという。「1998年の判例では、バックホテルなどのキーを持って女性に声をかけただけでもレイプの意思があったと認められるのよ」そう言いながら手錠を出すと、少年はそれに驚き逃走をはかる。ティラは思わず逃げる少年の足を撃つ。アディは、加害者が怪我をすると慰謝料が減るとティラの愚挙をなじり、言い合いになる。パトカーのサイレンに二人はわれに返り作戦を続行する。
Scene5 [News #1]
「昨夜、ロウアーサークルでレイプ事件が起きました。被害にあったのはプロックDに住む女性で、犯人ジュバル・レミックスは付近をパトロール中のシチズンコップのティラ・クレメンスさんによって現行犯逮捕されました」ニュースキャスターのジョンが、番組を収録している。ニュースではこの犯人のインタビューが紹介される。ジュバル・レミックス、通称ジュースは犯行を全面否定し、著名なジャーナリストである兄に必死の助けを求める。収録が終るとジョンは、新居に越したばかりのせいか頭が痛いと語りスタジオを後にする。
Scene6 [room #2]
  アディが帰宅すると、ティラがニュースを観ている。彼女らによりレイプの濡れ衣を着せられたジュースの兄が著名なジャーナリストだということ以外は全て順調だという。そのころジョンは電話で番組のパートナーのケリーと収録の反省会をしている。ジョンはよほど脳裏に焼き付いたのか、ジュースの切実な訴えは良く録れていたと絶賛し資料をまわすように頼む。
Scene7 [Are you sleeping?]
  ジョンの夢。スクリーンとテレビモニターが光りながらジュースが兄へ呼びかけている。「ねてるの?兄さん。調べてるんでしょ?あいつらの居場所」いくつかのモニターにケリーやスタッフの顔が映し出されジョンに語りかけてくる。その間もジュースは「復讐してよ」と訴える。まるでジョンが自分の兄だとでもいうようにジュースの訴えは続く。やがてケリーとスタッフは二つのモニターを使い会話をはじめる。最近ジョンは少しおかしい。弟がどうとか言っている。だけどジョンには弟なんていない。「ジョン?収録の時間よ」「兄さん」「ジョン?起きて下さい」「兄さん。起きてよ!」ジョンはうなされ悲鳴をあげる。やがてコンピューターアラームがジョンを起す。ジョンは汗を拭い電話に手を延ばす。「もしもし都市ネットN局のジョン・ウォーターズと申します。あなたの取材をお願いしたいのですが」
Scene8 [room #4--the private settlement]
  アディが部屋で電話に出ている。電話をきるとそれがテレビ局からの取材の申し込みだと大喜びでティラに告げる。アディは造形美術家をきどり、くだらない作品を作っているが、取材がロウアーサークルに住む若手芸術家特集と聞いて、すっかり有名人気分である。そこにドアベルが鳴る。フィールスレッジ大学の教授と名乗る男がドアの外にいる。弟の件で話しがあるといいジュースの名を出す。ティラは彼をリビングに通す。彼は社会学の大学教授であり著明なジャーナリストでもあるジュースの兄、ジャバル・レミックスであった。彼は、飄々とレイプ事件のことを語り、それが二人の策謀による狂言だということを推理して見せる。そして自分はメディアの表に立って彼を弁護するわけにはいかないが、お互いにとって良い方法があると言い出す。アディとティラに20,000ECUのEキャッシュを渡すかわりに、誤認逮捕の可能性を示唆する文書にティラが署名をするように要求する。この方法なら彼女らは予定通り給付金を受け取る事ができる。しかしティラのシチズンコップの資格は剥奪されるという。一瞬の間もおかずアディはそんな資格どうだって良いと言い放つ。ティラはその条件を飲みレミックス教授は上機嫌で退散する。アディは芸術家として認められ、大金が手にはいると喜び、取材の時に着る服を探している。そこでティラのシチズンコップの制服を見つけ「あ、これもういらないんでしょ。邪魔なのよ。捨てちゃってよ」と言い床にほうり投げる。ティラは「兄弟って似てるのね」とつぶやく。
Scene9 [Prey on!]
  ラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調、第二楽章」が流れる中で、モニターにいくつもの猫の絵や写真が映し出される。猫の泣き声がし部屋に一人になったティラがお腹が空いたと訴える猫に「どうして、自分で餌がとれないの?」と静かに語りかける。「私たちだって捕食するわ。あなたたちペットだけね、そうしないのわ。さ、食べなさい」と結ぶ。
Scene10 [Revenge in the room]
  取材の日。部屋にジョンがいる。ティラがその相手をしていると、女優のような格好のアディが出てくる。ジョンの取材が始まるがアディはティラをメイドのように使う。「Are you sleeping」の一節が流れ、ジョンが取材を始めようと言う。なぜかティラにも同席するように頼む。ジョンは作品制作の資金をどうしているのか、とインタビューを始める。その誘導尋問にアディは思わず、偽装レイプの話しをしてしまう。ジョンは録音していたテープを止め取材の終了を告げる。ティラはすぐにジョンの目的を悟り、脅迫のネタになるテープを取り上げるようアディに指示しジョンに銃を向ける。テープを取り上げるとティラは、取材が終ったのなら引き取ってください、とジョンに言う。しかし、ジョンの目的はゆすりではなかった。彼は自分がジュースの兄だという思い込みから、弟の復讐を遂げにきたのだ。ティラはそのことを悟る。ティラはまずアディが復讐の鉾先を向けられているのを見ると、復讐のために彼女をレイプするのなら、バスルームを使って、などと言い放ち、アディを愕然とさせる。ここで、ジャバルとティラの後々の会話が録音として流れる。
「では、その男は、まずアディさんをバスルームに連れ込んだと」「そうです」「レイプされると思い、急いで、バスルームの鍵を探しました。」
 個人的な復讐を社会正義にすり替えるジョンにティラの舌鋒は鋭い。ついにアディはうずくまり泣き出してしまう。ティラはジョンに彼の弟について質問を浴びせかける。ジョンはその質問に答えられない自分に一瞬おののく。そのすきにアディは、バスルームへ逃げ込む。ジョンはアディを殺すといいバスルームへ消える。大声でティラに助けを求めるアディ。ティラは「わがままね。一人っ子って、どいつもこいつも」と言うと、銃を手にバスルームの前に立つ。
 ジャバルの録音声が流れる。「それで、あなたは鍵を探しているうちに引き出しの奥にあった銃を見つけた。それでその男を射殺した。そういうことですね。」「はい」
 バスルームにティラが消え、銃声がする。半透明のバスルームのガラスタイルに鮮血が飛ぶ。
 ジャバルの声、「なるほど。あなたの判断は正しかった。今言った通りに警察には話したのですね」
 ティラが冷静に部屋の中央に戻ってくるとアディが飛び出してきて、ティラを詰問しようとする。「どうしてすぐに助けてくれないのよ!!。銃もってるんだったらさっさと・・・」ティラが振り向いた瞬間、アディの目に自分に対して戸惑う事なく向けられた銃口が飛び込み、彼女は言葉を失う。「あ、ごめんなさい。一瞬あいつに見えちゃった」ティラは冷たく言い放ち、警察を呼ぶ前にスパゲッティを食べようという。アディは、小さく頷くしかなかった。
Scene11 [room #5]
  女性キャスターがしゃべっている映像が映し出される。キャスターはレイプ容疑者を逮捕したシチズン・コップが出した誤認逮捕の可能性を示唆する文書について、その後の展開をかたっている。
 ティラが電話をしている。アディは、後ろの棚で何かを探している様子。ティラと電話をしているジャバル・レミックス教授も舞台のどこかにおり「でしたら大丈夫。正当防衛が認められるでしょう」と、先ほどの録音声の続きを語り始める。教授はもうひとつサインが必要な書類ができたので、ティラに電話をかけ、ついでにティラから先日のジョンの凶行について相談をうけている。ティラは弟のために奔走する教授を快く思っており、書類を取りに行ってその場でサインしても良いと持ちかける。しかしジャバル教授はこれからパーティーだとその申し出を断わる。弟の釈放もまだなのにパーティーをすることに、ティラは思わず不信感を言葉にする。それに答え教授の口から、なぜ弟の釈放に尽力したのかが語られる。兄弟保有者は、その精神安定率が高いことが医学的、統計的に証明されており、価値が高い存在である。「知的職業や高度な精神性が要求されるビジネスでは、兄弟の存在が高い地位を保証してくれるのです」弟が大事というのは、弟がいるという事実が大事ということだと教授は語る。「あなたたちだって、友達が大事だとは言いますけど、実際、大事なのは、友達がいるということでしょ?」失望を覚えたティラは電話を切り、アディの方を向き直る。そこには、またいつものままの二人がいる。アディが退室する際に仕掛けたいたずらに、怒ったティラはアディを追って外に出る。
Scene12 [GAME #2---the party]
  一人残ったジャバル・レミックス教授はタキシードをきてパーティーへの準備をしている。ジョンが壊したアディの造型作品を手に取ると、作品は崩れ、中からバラの花びらがこぼれ落ちる。テーマ曲『WE UNDERSTAND』が流れる中、彼は観客に正式な礼をし退場する。つづいて、ジョン、アディ、ティラが現れ、全員が消えると、スクリーンとモニターに、監獄の中でゲームをしている緑の髪の少年、ジュースの姿が映る。そこには、やがて「Game is over---」という文字が現れ、すぐに「The party goes on...」へと変わる。ホワイトノイズが残る。-幕-